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新年早々、負け惜しみと屁理屈

年末年始にやっておかなければならない仕事があるのだが、どうも年末年始の雰囲気というのは、落ち着かない。

年末の仕事納めの前日だったか、職場の仕事部屋で仕事していると、職員さんが来た。

「先生に、テレビ番組のインタビュー取材の依頼が来ています」

「僕にですか?」

「ええ。なんでも、民放の所ジョージさんの番組だそうです」

「どういうわけで僕に?」

「企画書が送られてきたので、見て下さい」

見てみると、どうして俺が?というテーマなのだが、おそらく番組のスタッフが、そのテーマに関してネットサーフィンをしていて、たまたま僕の名前を見つけたのだろう。

「もし、取材をお受けになるのであれば、直接先方にお返事して下さい。お断りするのであれば、こちらからお断りすることもできますけど」

「断っていただけますか」

「いいんですか?」

「ええ。なんだったら、同僚を推薦しますよ」

職員さんは、テレビ出演を断るのかよ、といった感じの、訝しい表情をした。

「僕、テレビのこういう取材は受けないことにしているんです」

僕は、2年ほど前にテレビ番組のインタビューという形で出演して、ひどく懲りてしまい、今回もまた結果は同じになることが目に見えていたので、断ることにしたのである。

所ジョージさんの番組っていったって、インタビューは別撮りで、所ジョージさんに会えるわけでもないはないし、そもそも、所さんに会いたいという気持ちがそれほど強いわけでもない。

何より僕には、テレビ番組で気の利いたことを言うという才覚がないのだ。

同業者の中には、そういう才覚に長けた人がいて、マスコミに引っ張りだこの人が何人かいる。適度に気の利いたことをいったり、タレントに臆することなく受け答えをして見せたりと、話の内容とは別に、そういう技術に長けた人が重宝されているのである。

不思議なことに、そういう人たちは、僕にとって苦手な人たちばかりなのだ。

しかし、世間的に見れば、マスコミに露出している人は、その業界のトップランナーのように思えるのだろう。

業界の中にいると、世間の人たちの認識とのギャップに、驚くばかりである。

何人ものむかしの教え子から、

「先生がテレビに出るのを心待ちにしています」

と言われることがある。ごめん、全部断っているんだ。

最近では、CGで画面に現れる5歳の女の子が、雑学を知らない大人を叱る番組、というのが流行っていて、そこに、知識を提供する大人たちがVTR出演しているのだが、そこへの出演が、一つのステイタスになっているようである。もちろん僕は、お声がかかったこともないし、これから先も永遠にお声がかかることはない。

そもそもあの番組は、ちょっと苦手である。だって、5歳の女の子の身体を借りて、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と、中年のオッサンが悪態をついている番組なんでしょう。見ようによっては、とても悪趣味の番組である。

中身はいわば、雑学番組。知識が消費財として切り売りされている。まるで飲み屋でオッサンが雑学を披露するためのネタを提供しているようなものである。

そんな雑学の切り売り番組ごときに、俺の知性を売ってたまるものか!というのが僕の本音である。ま、世間的にはそれを「負け惜しみ」ともいうんだけど。

そもそも、なんで、どーでもいい雑学を知らないというだけで「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と、オッサンに怒られなければならないんだ?

「ボーッと生きてんじゃねえよ!選挙に行けよ!」

とか、

「ボーッと生きてんじゃねえよ!世の中を良くするために行動しろよ!」

とかだったらわかる。いや、もっと根源的なことをいえば、ボーッと生きてはいけないのか???

…ま、こういうことを言う奴のことを、世間的には「屁理屈おばけ」という。

年始早々、暗い話になってしまった。合掌。

今年も、見えないところで頑張ります。

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