韓国路線バスの謎・解決編
12月7日(土)
なぜこの週末に、1泊2日で韓国に行ったのかって?しかも年に一度の「業界人祭り」をサボってまでなぜわざわざ行ったのか?
それは、S大学博物館の企画展が、12月7日(土)が最終日で、どうしてもこの企画展を見に行かなければならなかったからである!
この日しか、企画展を見に行くチャンスがなかったから、強引にこの日にソウルに行くことにしたのである。
S大学は、江南(カンナム)、つまり漢江(ハンガン)の南にあるので、今回は、江南駅の近くのホテルに泊まることにした。
午前11時半過ぎ、金浦空港に着いて、いったん江南駅近くの宿に荷物を置いてからS大学に移動する予定だったが、それでは時間がもったいないなあと思い、空港に着いてから急遽、
「S大学に直接行くバスがありますか?」
と聞いてみたところ、
「6番乗り場からS大に直接行くバスが出ていますよ。終点で降りればいいです」
というので、荷物を持ったまま、バスで直接、S大学に行くことにした。
1時頃にS大に着いた。そこで1時間半ほど、企画展を見学した。
実は今日中に、もう1カ所、訪れなければならない場所があった。それは、以前に訪れたことがある、「人里離れた山奥にある研究所」である。
ここでも企画展をやっていて、月曜から土曜までが開館日で、日曜日が休館日なのである。ということは、行くとすれば今日しかない、ということになる。
以前に行ったとき、さんざん苦労してたどり着いた記憶があるので、面倒なのでS大学からタクシーに乗って行くことにした。
しかし、一つ懸念があった。「人里離れた山奥にある研究所」は、おそらくタクシーの運転手さんにとってもよくわからない場所である。ソウルのタクシーの運転手さんは、自分がよくわからない場所には、行きたがらない。つまり、乗車拒否される可能性が高いのである。
タクシーにカーナビが付いてるんだから、それで調べてくれればいいじゃん!と、こっちとしては思うのだが、どういうわけか、カーナビをあまり使いたがらない運転手さんがいたりするのである。
案の定、1台目につかまえた運転手さんは、「わからねえ」と言って、乗車拒否されてしまった。
だが運良く、2台目につかまえたタクシーの運転手さんが、カーナビで場所を調べてくれて、「行ってもいいよ」と言ってくれた。
「ただし、その場所はソウル市外にあるから、タクシー料金が上がりますぜ」
「どのくらい上がるんです?」
「市外に出たとたん、2割増しになります」
「わかりました」
いくらになるのか見当もつかなかったが、「30~40分くらいで着く」と言ってたみたいだから、それほど高額にはならないだろうと思い、そのままタクシーで行くことにした。
タクシーはどんどん郊外へと走って行き、こんな山の中だったっけ?と行った道を登りながら、ようやく目的地に着いた。タクシー料金は、日本円で2500円程度だった。
相変わらずの山の中である。土曜日のせいか、だだっ広い研究所には人っ子ひとりいない。入口に守衛さんが1人いるだけである。
それでも、企画展は開いていた。もちろん、お客さんは人っ子ひとりいない。
「こんなに誰もいなくていいのかよ!」
と思いながら、1時間ほどその企画展を見て、4時半ごろ、その研究所を出て江南駅近くのホテルに行くことにした。
事前に調べたところでは、9004番のバスが、ここから直接江南駅に行くので、9004番のバスに乗れば間違いがない。
…とここで、思い出したことがあった。
4年ほど前、ここからソウル市内に戻ろうとしたときに、バス停でいくら待っていても、バスが通り過ぎる、という謎の現象が起こった。おかげでそのときは、あやうくソウル市内に帰りそこねた。
いまだに僕の中では、その謎の現象の意味が解決できていなかった。
また同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。そこで、研究所の入口にいた守衛さんに、バス停の場所を聞くことにした。
「バスでソウル市内に戻りたいんですけど、バス停はどこですか?」
するとその守衛さんは親切に答えてくれた。
「あそこに、バス停が見えるでしょう?あそこに行けばいいです」
そう言って指した場所は、以前と同じバス停の場所だった。つまり、「いくら待っていてもすべてのバスが通り過ぎるバス停」を指さしたのである。
しかし、その守衛さんがあまりに親切に答えてくれたので、僕はまた、そのバス停でバスを待つことにしたのだった。
そのバス停には、電光掲示板があるし、バスの路線図もある。どう見ても立派なバス停である。
電光掲示板には、何番のバスが、あと何分で到着します、という表示が出ている。
9004番のバスについても情報が出ていて、ホッとした。あと1分で到着、とある。
…というか、ほとんどすべてのバスが、「あと1分で到着」と出ている。どういうこっちゃ???
その停留所には、次々といろいろな番号のバスが訪れるのだが、例によってものすごい勢いで通り過ぎていく。
僕はたちまち不安になった。また4年前と同じ結果になるのではないだろうか?
あと1分で到着、と書いてあった9004番のバスは、5分過ぎても来ない。
「1分って書いてあるのに、どうして来ないんだろう?」
と同行の妻が聞くので、
「1分以上かかる場合は、すべて1分ということにしてるんじゃない?」
と答えてみたが、よくわからない。
10分近くたって、ようやく9004番のバスが向こうから来るのが見えた。はたして停まってくれるだろうか?
「こういうときは、轢かれる覚悟で『乗りま~す』ってアピールすればいいのよ」
と妻が言うと、バスの前に飛び出して、「お~い」とバスに向かって手を振った。まるで、遭難した人が助けを求めるように、である。
するとバスが停まった。
「よかった。停まってくれた」
バスの中から運転手さんが出てきて、
「ここは乗り場ではないんですよ。降りるための専用の停留所でね」
「え?そうなんですか?」
「始発の停留所は、反対側を戻った先にあるんです」
「そうだったんですか…」
「でもまあいいです。乗ってください」
そういうと、バスの運転手さんは親切に、僕たちを乗せてくれたのである。小さな娘も一緒だったから、不憫に思ったのかも知れない。
バスが走り出してしばらくすると、「最初の停留所」に停まった。
(ここが本当のバス乗り場だったのか…)
と、ようやく4年越しの謎が解決したのであった。次回来たときは、もう迷うことはあるまい。
しかしそれでもなお、不思議なことがある。
守衛さんはなぜ、降りるための専用の停留所を指さして、あそこがバス乗り場だと教えてくれたのだろう?
ひょっとして守衛さんも、よく知らなかったのではないだろうか?
もうひとつの大きな謎。それは、なぜ、降りるための専用の停留所であるにもかかわらず、「あと何分で到着する」といった電光掲示板や、バス路線図が設置されているのか?
乗り場ではないのだから、「あと何分で到着する」という電光掲示板は不要である。もちろん降りる人にとっても不必要な掲示板である。ではいったい誰に向けての情報なのか?
この電光掲示板や路線図があったばかりに、僕たちは、ここがバス乗り場だと勘違いしてしまったのである!
不可解さを残したまま、夕方5時過ぎ、9004番のバスは江南駅の繁華街まで、僕たちを送ってくれたのだった。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 出張あれこれ(2022.11.30)
- からすまおいけ(2022.11.27)
- 傾聴の旅(2022.11.23)
- 無事に終わったのか?無事じゃなく終わったのか?(2022.09.29)
- 小椋佳談議(2022.09.27)
コメント
(某大学にて)
守衛さん、駐車場はここだけですか?
ええ。満車の場合は近所の有料駐車場にお止めください。
どこら辺にありますか?
(地図を出して)ここと、ここです。
そうですか。教えて頂いてありがとうございます。
いえいえ。
あのう、駐車料金はいくらですかね。
さあ、その駐車場は我々は使ったことがないので。
つまり、こういうこと。
ちなみに、韓国の眼福拓本のある大学へ行けるバスは、金浦空港も仁川空港も通りますのでバス番号は同じ。
投稿: 不朽のこぶぎ | 2019年12月10日 (火) 08時16分