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お菓子売りの女性

12月26日(木)

今年最後の検査をするために、都内の病院に向かう。

そこは、ビジネス街と観光スポットが合わさったような町で、つまりはビジネスマンと観光客が混在する町である。

地下鉄の駅を降りて、観光スポットのエリアから、ビジネス街の方に歩いて行くと、目的の病院がある。

もう少しで病院の建物に着く、というところで、

「あのう…すみません」

と声をかけられた。

若い女性なのだが、台車を押しながら歩いていて、その台車の上には、発泡スチロールの箱が積んである。

「ちょっとお時間よろしいでしょうか」

「何でしょう?」

最初、道でも聞かれるのかと思った。

「実は私、店舗を持たないでお菓子を売り歩いているのです」

「はあ」

「ちょっとお菓子を見ていただけますでしょうか」

そういうと、その女性は、台車の上にある発泡スチロールの箱の蓋を開けた。発泡スチロールの箱の中には、何種類かの和菓子や洋菓子が入っている。

手作りのお菓子とかオリジナルのお菓子、というわけではなく、いろいろなお店で売っているような商品を集めている、という感じである。

「もしよろしければ、買っていただきたいと思いまして…」

あまりにも唐突でビックリした。そもそも移動式店舗だとしても、台車の上に発泡スチロールの箱を乗せただけなので、一見してお菓子を売っているようには絶対に見えないのだ。箱が発泡スチロールだから、外から箱の中身が見えるわけでもない。

ま、ふつうに考えたら、めちゃくちゃアヤシい感じがするはずである。

こういうのを何て言ったらいいの?現代の棒手振り?いや、あるいは、見ようによってはマッチ売りの少女のお菓子版、というふうにもみえる。

マッチ売りの少女でいうところの、

「マッチはいかがですか…」

と言われているような気がして、こりゃあ、買わないとこの人は飢え死にしちゃうんじゃないか、という思いにとらわれた。

折しも、これから病院に行って検査をしに行く身だ。ここで善行を積んでおけば、検査の結果も良いのではないかと、験を担ぐことにした。

「何がおすすめですか?」

女性は、箱の中にある何種類かのお菓子の中から、

「いまはこれが人気があります」

と、お団子のパックを取り出した。

「これは京都のお店が作っているみたらし団子なんですけど、お団子の中にたれが入っているのです」

「ほう…。じゃあ買いましょう」

「ありがとうございます!…あのう」

「何です?」

「私が個人的におすすめのお菓子がありまして…」

「どれです?」

「これです」

と言って、今度は「カマンベールチーズケーキ」の箱を取り出した。

「これ、北海道のお店が作っているチーズケーキで、とても美味しいんです」

「わかりました。じゃあそれも買いましょう」

「ありがとうございます!」

というわけで、「京都のお店が作っている、たれが中に入っているみたらし団子」と、「北海道のお店が作っている、カマンベールチーズケーキ」を買ったのだった。

「賞味期限は大丈夫ですか?」

僕は念のため聞いてみた。

「大丈夫です」

見るとたしかに、賞味期限内の商品である。

「ありがとうございます。またよろしくお願いします!」

といって、その若い女性は去って行ったのだが、ということは、定期的にこの界隈を台車を押しながら売り歩いているのだろうか?

それに、京都のみたらし団子と、北海道のチーズケーキって、コンセプトなさ過ぎるだろ!どんなチョイスをしているんだろう?

いちおうこの町も観光スポットなのだが、この町にゆかりの深いお菓子を売っているわけでもない。むしろ縁もゆかりもない「ご当地お菓子」、それも、さほど有名ではないお店のご当地お菓子を売っているのである。

しかも、観光スポットのほうではなく、ビジネス街のほうで売り歩いているのだ。あんな感じで、台車に発泡スチロールの箱を無造作に積んで、お菓子を一日中売り歩いているのだろうか???

すべてが謎だらけだったが、まあマッチ売りの少女ならぬお菓子売りの女性を助けたのだと思うことにして、病院に向かった。

検査の結果は、善行を積んだわりには、期待に反したものだった。まあ、世の中そんなうまくはいかない。

だがお菓子は美味しかった。

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コメント

マルチ商法に引っかかりかけた話
https://zukima65536.hatenablog.com/entry/2018/04/24/マルチ商法に引っかかりかけた話

投稿: DS-MAX系こぶぎ | 2019年12月27日 (金) 07時45分

なるほど、こぶぎさんのコメントで、はじめて知りました。

調べてみると、同じような体験談を書いているブログがいくつかあって、都内のいろいろなところに出没しているみたいですね。お菓子の銘柄が共通していたりするので、同じ会社によるものでしょう。

共通しているのは、「憐憫の情が生まれてつい買ってしまう」「お菓子はそこそこ美味しい」「値段はそこそこ高い」といったところでしょうか。

投稿: onigawaragonzou | 2019年12月28日 (土) 01時12分

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