バックステージ
コロナコロナで、陰々滅々としている毎日だが、最近ハマっているのは、YouTubeの「伯山ティービィー」である。
ご存じ、講談師の神田松之丞改め、神田伯山の真打ち昇進襲名披露興行に密着したドキュメントで、襲名披露パーティーから始まり、新宿末廣亭、浅草演芸場、池袋演芸場と、毎日おこなわれる襲名披露興行の舞台裏を、二つ目の番頭さんが撮影し、それをプロのドキュメンタリー映画作家が20分ほどに編集して、翌日にアップするという、実に贅沢な動画である。コロナウィルスの脅威に負けず、いまのところ毎日、襲名披露興行が続き、もう30回近く更新されているのだ。
テレビ局のスタッフではなく、同じ寄席仲間の「二つ目」がカメラをまわしているから、楽屋の芸人さんたちもかまえることなく、リラックスしている。
「情熱大陸」みたいな、余計なナレーションや過剰な演出がまったくないのもよい。ドキュメンタリーとしてどっちがすぐれているかといえば、「情熱大陸」よりもむしろ、「伯山ティービィー」である。
僕がいままで全然知らなかった、文治師匠、遊雀師匠、笑遊師匠、龍鏡師匠、鯉昇師匠、柳橋師匠、寿輔師匠、松鯉先生等々、魅力的なキャラクターが次々と映し出される。
文治師匠なんて、すげえ年寄りかと思ったら、俺より1歳年上にすぎないんだね。ということはこぶぎさんと同い年。
業界における俺の位置というのは、落語会における文治師匠の位置ということになるわけだ。
寄席の楽屋が、実に楽しい。だいたいバックステージというのは、どんなジャンルでも独特の昂揚感のようなものがあって、見ていて楽しいのだ。
傑作は、第9回。志らく師匠登場の回である。
この日は、機材のトラブルで、楽屋の様子を映した部分の音声が、まったく録れていなかった。楽屋で芸人さん同士が楽しげに会話している風景だけが、映像として残っているだけである。
芸人同士の会話が聞こえないんじゃ、おもしろくも何ともない。そこで伯山先生は、この無音の会話に、アテレコをつけてもらうことにしようと思い立つ。
そこで登場したのが、現役の活動写真弁士の、坂本頼光先生である。
むかしむかし、無声映画を上映しながら、その場でアテレコをつけていた活動写真弁士という職業があった。いまは無声映画がないので、とっくに絶滅した職業かと思っていたが、いまも現役の弁士さんがいるんだね。しかも坂本頼光先生は、まだ40代そこそこの若さというから驚きである。
この坂本頼光先生がつけたアテレコが、抱腹絶倒なのである。伯山先生が頼光先生を称して「天才」といっていたが、まさに天才である。
映像に登場するすべての人を、声色を変えながら演じている。しかもそれは、かつての名優の声真似になっていて、それがよく似ているのだ。
声を聞いただけで、誰の声をあてているのかが、この僕にもわかるほどだ。
心覚えに書いておくと、
春風亭昇々…平泉成
神田鯉栄…浦辺粂子
桂鷹治…アントニオ猪木
三遊亭遊雀…殿山泰司
三笑亭夢丸…(不明)
春風亭柳橋…滝口順平
塙宣之(ナイツ)…サザエさんのアナゴ君(若本規夫)
土屋伸之(ナイツ)…サザエさんのマスオさん(増岡弘)
三遊亭笑遊…永井一郎
神田松鯉…美輪明宏?
立川志らく…小沢昭一
夢丸さんの声だけ、頭に思い浮かばなかったのだが、あとはだいたい声を特定できた。
個人的には、殿山泰司の声をあてる、というセンスが、ツボにはまった。
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コメント
俺の名前は明智こぶ郎。
明日の伯山TVが待ちきれず、青空文庫の「大岡政談」で朝方までかかって、最後まで読んでしまった。
本で読むと、ピカレスクものというより、推理もの。しかもこちらが勝手知ったる地名が物語に出てくるから、こうなると探偵魂がうずいて仕方ない。
現場検証に行ってみたいが、なにしろ300年前の話なので、どこだか分からない地名もあるし、事件も既に解決済みだ。というか、そもそもフィクションなので、架空の場所だってあろう。
さあ、俺がホシの足取りをたどって何かしたいかというと、その続きは(パパン)
またの機会に。
投稿: 畔倉こぶ四郎 | 2020年3月16日 (月) 18時13分