「おかあさんといっしょ」沼
ここ1年弱、「おかあさんといっしょ」という沼にはまり込んでいる。
番組の構成だけを見たら、実にワンパターンな構成なんだけれども、中身を分析すると、実によく考えられている、というか、かなり強烈なメッセージを発している番組だと思う。
ジェンダーの研究者は、絶対にこの「おかあさんといっしょ」を見るべきだと思うのだが。「おかあさんといっしょ」の歴史の中にこそ、この国のジェンダー観の変遷が見て取れるのではないか、と思えるほどだ。
たとえば、毎週火曜日に「ガラピコ忍者修行」というコーナーがあるのだが、ここに登場する赤忍者が、体操のおにいさんで、青忍者が、体操のおねえさんである。
また、2020年の2月の「月歌」(今月の歌)は「きみイロ」という歌だった。この歌は、きみはこれからたくさんの色に出会うと思うけども、きみらしい色を見つけてほしい、という、メッセージ性の強い歌なのだが、この歌とともに、歌のおにいさんとおねえさん、体操のおにいさんとおねえさんの4人が着ている服の色が、めまぐるしく変わるという映像(MV)が流れる。その服の色を注意深く見ると、2人のおにいさんには赤系の色、2人のおねえさんには青系の色が、意識的にあてられているのである。
むかしは、…少なくともの僕らの時代は、男の子は青で、女の子は赤、というのがあたりまえの時代だった。でも、男の子の中には赤が好きな子もいるし、女の子の中には青が好きな子もいる。古いジェンダー観からの解放、という強いメッセージがここには込められているのだ。あ、それと、多様性ね。
それだけでない。「おかあさんといっしょ」といえば、必ず登場する人形劇のトリオがいるでしょう。いまならチョロミー、ムームー、ガラピコの3人。
この性格付けもまた面白い。元気でみんなを引っ張っていくのが女の子のチョロミーで、内気で引っ込み思案なのが男の子のムームー、そしてガラピコはロボットなので、厳密に言えば性別がない。
「おかあさんといっしょ」の人形劇トリオの変遷を考えてみると、おそらく少し前までは、男の子2人、女の子1人で、女の子は「紅一点」的な役割として存在していたと思われるのだが、いまはそんなことがないのだ。男の子と女の子の比率も、ガラピコがロボットという設定でかろうじて男性優位というこれまでの慣習を克服している。
最近の「今月の歌」も、固定化されたジェンダー観ではなく、多様性にかなり配慮した内容になっている。
…いや、僕が言いたいのは、こういうことではない。もっと細かいことなのだ。
先月(3月)、「なんでもあらいぐま」など、手を洗うということを奨励するような歌が流れた。これは、新型コロナウィルスの感染が拡大して、子どもたちに手を洗う習慣を身につけてもらおうという意図による選曲であることは明らかである。
そして今日(4月24日)。
冒頭の歌が、「あしたははれる」という歌だった。坂田おさむさんが作った名曲である。ちょっと古い歌ということもあり、今の4人のメンバーになってからこの歌が歌われたことはなかったのではないだろうか。
幼稚園や保育園にも行けず、家にいる子どもたちに対するメッセージとしては最適の歌であることは間違いないのだが、重要なことはこの歌が、速水けんたろうさんが歌のおにいさんだった時代に、最後の「今月の歌」として、坂田おさむさんが速水けんたろうさんにプレゼントした歌である、という事実である。つまりこの歌を最後に、速水けんたろうさんは歌のおにいさんを引退したという、おそらく思い出深い歌なのだ。
このタイミングで、若い彼らがこの歌を歌ったというのは、先輩である速水けんたろうさんに対する、強烈なメッセージだったのではないだろうか。新型コロナウィルスで闘病している速水けんたろうさんへの、回復を願うメッセージである。
そう考えると、この番組の細部に、強烈なメッセージが託されていると考えざるを得ないのである。こうして僕はいま、「おかあさんといっしょ」という沼にはまり込んでいるのだ。
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コメント
(現状)
・体操のお兄さん・お姉さんが、実は踊っているだけで歌わない。そのためセンターに出てこないので、ダンスのフォーメーションが単調となる。
・そもそもメンバー人数が偶数なので、センター1名を中央に出して、シンメトリーのフォーメーションが作りづらい。
・メンバー全員がお兄さん・お姉さんでは、メンバー間で誰を「ヌナ」「オンニ」「オッパ」「ヒョン」と呼べばいいのかわかりづらくて困るだろう。
・だいたい番組名からして、もっとお母さんをターゲットにすえるべく、男性メンバー中心のチーム・コンセプトに変えるべきだ。
・ダンス曲が多いのに、メンバーにラッパーがいないのはおかしい。
(改善策)
K-POPファン歴20年以上の経験を元に、各メンバーのダンスや歌唱力、表情管理なども検討した結果、新チームのポジションを以下のように決定する。
メインボーカル :あつこお姉さん(リーダー)
メインダンサー :あづきお姉さん
リードボーカル :ゆういちろうお兄さん
リードダンサー兼ラッパー:まことお兄さん
リードダンサー :たいせいお兄さん(センター。「お父さんと一緒」から電撃移籍)
女性メンバー2人は「オンニーズ」を結成し、メインボーカル、メインダンサーとしての圧倒的なパフォーマンス・スキルを備えたガール・クラッシーな魅力で、弟たちを優しく見守る設定にする。
男性メンバー3人は「トンセンズ」を結成し、マンネで愛嬌担当のたいせいお兄さんを中核に、仲良しの弟同士で、ワチャワチャ感を演出。さらに「ゆうまカップル」「まこせいカップル」「ゆうたカップル」の組み合わせで2名ずつコーナーを担当し、それぞれケミを爆発させる。
なお、新チーム名は「オモニワン 어머니원」とし、ファンダム名は「PTA」、コンサートは「参観日」と称する。
これで、世界を目指せるはず。
投稿: こぶぎPD | 2020年7月25日 (土) 16時29分