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BLMとALM

いま、米国を中心に起こっている「BLACK LIVES MATTER(BLM、黒人の命は大事だ)」という運動は、各地で広がりをみせ、デモが起こっている。

先日、NHKの「国際ニュース番組「これでわかった!世界のいま」の公式Twitterに掲載された、「アメリカで黒人が今置かれている状況」について解説するアニメ動画が、まったく問題の本質をとらえていないどころか、かえって差別を助長するような内容だったと非難を浴び、翌週の番組の冒頭で謝罪し、その動画を削除する、という事態になった。

僕はたまたま、その番組冒頭の謝罪のくだりを観ていたのだが、その動画の内容は、たしかにひどい内容のものだった。

で、これに関連して、6月26日(金)の毎日新聞のネット版に、「NHKは何を間違ったのか~米黒人差別の本質 「知らない」では済まされない 黒人差別のシンボルとタブー 矢口祐人・東大教授に聞く」という記事が掲載されていた。残念ながら会員限定有料記事なので、会員でない僕は、読めるのは冒頭部分だけで、途中からは読めなくなってしまう。

ただ、そのインタビュー記事の冒頭部分は、僕にとってとても印象深い内容だった。以下、引用する。

「ーー黒人差別解消を求める運動「BLACK LIVES MATTER(BLM、黒人の命は大事だ)」に対し、「ALL LIVES MATTER(ALM、すべての人の命は大事だ)」と反論する人がいます。火事現場に駆けつけた消防士に対し、燃えていない隣家が「俺の家も大切だ。水かけろ」と言っているようにも見えますが、こうした主張をどう考えればよいですか。

 ◆BLMは、「黒人の命や生活の重要性を、白人のそれと同じレベルで扱ってほしい。現在のゆがんだ社会の構造を変革しなければいけない」という訴えです。

 一方のALMは「すべての命を大切に」という意味ですから、一見すると正論に聞こえます。しかし実態は、保守派、右派がBLMに対抗する形で使っている表現です。「我々は差別主義者じゃない。みんなで対立しないで仲良くしよう」といいながら、BLMが問題視する制度的差別の存在や構造的変革の必要性を否定し、現状を維持しようとしている。BLMは、「構造を変えない限り、みんな仲良くなんてできない」と考えているのです。」

僕はこれを読んで、溜飲が下がる思いがした。なぜなら、僕もここ最近、似たような体験をしたからである。

最近、フェミニズムとかジェンダーとか、そういうことを少しずつアップデートしようとしているんだけれど、ある場所で、ちょっとジェンダー的な観点から発言しなければならないことがあって、まあまだまだ勉強不足なんだけど、ジェンダーによる差別についてやはり考えなければいけない、的な発言をしたんだよね。

そうしたら、一人、猛烈に反論してくる人がいて、「そうやってジェンダー論者がみんなに特定の意見を押しつけようとするのは、他の意見を排除することにつながり、表現(言論)の自由を侵害しかねない」って言われたんだよね。

その人は別に極端な思想の持ち主ではなくて、ご自身は「自分はバランス感覚がとれた人物である」と自覚されている人なんだよね。つまり自分のバランス感覚から言ったら、フェミニストは極端な意見を主張し、その主張をみんなに押しつけようとする人々、ということになるのだそうだ。

僕は何となく、その人の意見にもやもやを感じていたんだけど、というかかなり腹が立ったんだけれど、それに対してどのように反論したらよいのかわからない。それはとても悔しい体験だった。

で、僕はこのインタビュー記事を読んだとき、そうか、と思った。

つまりは、僕は「BLM」と主張していたら、相手は「ALM」と反論した、ということなのか、と。

「現在のゆがんだ社会の構造を変革しなければいけない」「その構造を変えない限り、差別なんてなくならない」と僕は言ったつもりだったのだが、相手は「いや、男性女性にかかわらず、すべての人の人権が重要なんだ。男性だって差別されている」と反論したということなのである。

一見正論にみえる相手方の理屈の裏には、「制度的差別の存在や構造的変革の必要性を否定し、現状を維持しようとしている」心理がはたらいているのではないだろうか、と僕は感じ取った。

しかし、そのことを相手方に言ってみたところで、おそらくこちらの真意は理解されることはないだろう。なぜなら相手方にとってこちらの言い分は、「特定の立場に立った偏った意見」としか映っていないから。

「なんで○○に対する差別解消ばかり主張するの?××だって差別されているじゃん」

という理屈が「正論」としてまかり通っているうちは、差別はなくならないのだろうと、僕はいま、絶望的になっている。

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コメント

数年前から私の勤めるような古めの大企業はLGBTに敏感になっていまして、
みんな多様性を認めよう。 私はアライ(Ally)だよと表明しようと、会社独自のロゴ募集とか社員証に虹色シール貼ろうぜみたいな施策を会社主体でやりまして、僕自身は「そもそも半強制っておかしくね?」って思っていたら、数週間後に「本社の指示としては強制ではありません。意図が伝わらず申し訳ありません」的な通達が全社員に来まして、また責任逃れかと・・・。
そもそも人権教育してる管理者が男尊女卑だったり、一昔前に紅一点で管理者になったけど能力的にどんどん追い抜かされてむしろかわいそうな方だったりと色々と大変です。

投稿: 江戸川 | 2020年6月29日 (月) 22時24分

前の職場の時代から悩み続けていて、結局なにが正解なのかいまだにわからないので、自分の無力さに絶望するばかりです…。

投稿: onigawaragonzou | 2020年6月29日 (月) 23時01分

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