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仮定の質問には答えられない

「仮定の質問には答えられない」。

これ、最近の大臣の答弁などでよく聞く言葉なんだけれど、よく考えたら、おかしな話である。

「気象予報士さん、明日の天気はどうでしょう?」

「仮定の質問には答えられません」

これでは天気予報が成り立たない。

「将来の夢は何ですか?」

「仮定の質問には答えられません」

これでは面接試験が成り立たない。

つまりすべての質問を無力化する、魔法の言葉なのである。

この答弁のルーツについて、あんまり言及されている記事を見たことがないんだけど、これって明らかに、映画「小説吉田学校」(1983年公開、森谷司郎監督)のなかで、吉田茂首相扮する森繁久弥が言っていた台詞だよね。

映画なのに「小説吉田学校」って何だよ!と思うかも知れなけれど、もともとは、政治評論家の戸川猪佐武が書いた政治実録小説である。それを映画化したもので、なかなかにおもしろい映画である。

国会の場で、勝野洋扮する中曽根康弘が、

「もし第三国が日本に攻撃してきた場合、警察予備隊は戦うのか」

という質問をしたら、吉田茂首相が、

「仮定の問題には答えられない」

と答えたシーンがある。僕はこのやりとりがとても印象に残っていた。

つまり、「仮定の質問には答えられない」という答弁を最初にした政治家は、吉田茂である。

だから、昨今の内閣が、

「仮定の質問には答えられない」

という答弁を連発したときに、

「ははあ~ん、さては映画『小説吉田学校』からパクったな」

と確信したのである。

考えてもご覧なさい。いまの副総理兼財務大臣は、吉田茂の孫ですよ!

で、心なしか、「仮定の質問には答えられない」という答弁を頻繁にする人というのは、この副総理兼財務大臣なのである。たぶんほかの大臣にくらべて、この答弁をする機会が多いのではないだろうか。「仮定の質問には答えられない」という言葉と、その大臣の名前を合わせて検索をかけると、そうした答弁の実例をいくつも見ることができる。

ところで、映画の最後は、吉田茂が大磯の海岸で幼い孫と戯れるシーンで終わる、と記憶しているのだが、つまりはいまの副総理兼財務大臣の幼い頃である。

いまの副総理兼財務大臣が、この映画を見ていないはずはない。なにしろ、おじいちゃんがかっこよく描かれているからね。おそらく『ゴルゴ13』よろしく、自らの政治の教材にしているに違いないのだ。

この映画を見た彼は、自分のおじいちゃんが「仮定の質問には答えられない」と憤然と答えている姿を見て、「かっこいい~」と思い、自分も同じ台詞を使いたくなってしまった気持ちは、彼の性格から言ったら、十分すぎるくらいにわかる。

ちなみに、この映画には、現首相のおじいちゃんとお父さんも、一瞬だが登場する。現首相もまた、この映画を見て、「仮定の質問には答えられない」という台詞に痺れ、使いたくなっちゃったのかな?こうしてこの台詞は、再生産されていくのだ。

こういうのを、「馬鹿のひとつ覚え」という。

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コメント

こういう仮定に基づく本文記事には、コメントできない。

投稿: あっそう?こぶぎ | 2020年6月24日 (水) 21時23分

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