社会派おにいさん
先日、初めて「おかあさんといっしょ」の雑誌みたいなのが出ているのを知って、読んでみた。内容のほとんどは、番組のなかで歌われている歌の歌詞だとか、おにいさん、おねえさん、ガラピコプーの写真とか、そんなものだったんだけど、1ページだけ、歌のおにいさん、おねえさん、体操のおにいさん、おねえさんの4人の「生の声」を紹介するコーナーがあった。
ここでおさらいをしておくと、「歌のおにいさん」は、花田ゆういちろうさんという方で、番組ではおばけを怖がる気弱なおにいさんというキャラ。
「歌のおねえさん」は、小野あつこさんという方で、まじめで明るくて食いしん坊キャラ。
「体操のおにいさん」は、福尾誠さんという方で、体を動かすことが大好きな筋肉おにいさんというキャラ。
「体操のおねえさん」は、秋元杏月さんという方で、明るくて元気なマンネ(末っ子)キャラ。
で、現役のおにいさん、おねえさん、というのは、もちろんほかの番組に出演することはなくて、特定のメディアの取材に答えるというようなこともない。
つまり、外に向かって発言する機会がまったくなく、ヴェールに包まれている存在なのである。
そんな存在なので、雑誌のなかで、たとえ200字程度のコメントでも、4人のおにいさん、おねえさんの発言が載るというのは、かなり貴重なのである。
で、その内容を見てみると、「行ってみたいところ」というのがテーマらしく、歌のおねえさんのあつこおねえさんさんは、自分が以前、中学校の教育実習に行ったときに、生徒と一緒に「夏の思い出」を歌ったことを思い出し、尾瀬に行ってみたいと語っていた。いかにもあつこおねえさんらしい、まじめでシブい答えである。
体操のおにいさんのまことおにいさんは、「宇宙に行ってみたい」と語っていて、
(キャラそのまんまだな!)
と思ったり、体操のおねえさんのあづきおねえさんは、
「あつこおねえさんのお母さんの実家があるという沖縄に一緒に行ってみたい!」
とこれまたマンネらしい答え。
う~む。これはライターが、各人のイメージをもとにコメントを創作しているのかな?とも思ったのだが、歌のおにいさんのゆういちろうおにいさんのコメントが、ほかの3人とは違っていた。
「韓国映画『パラサイト』を観て、韓国に興味を持ち、韓国に行ってみたい、韓国語を勉強してみたい、という気持ちになった。よい映画を観ると、その国の文化を知りたくなりますね」
みたいなことを語っていた。
これだけでも僕は、ゆういちろうおにいさんのイメージがガラリと変わり、これまで以上に応援したくなったのだが、そのページの一番下に、コメントが収まりきらなかったのか、ゆういちろうおにいさんの追加コメントみたいなものが載っていた。
「最近、テレビで『チェルノブイリ』というドラマを観て、被害が次第に拡大していく様子が、新型コロナウィルスに直面している僕たちにとって、とても考えさせられる内容でした」
みたいなコメント(引用は正確ではない)が書いてあって、
(おいおい、ずいぶんと社会派だなあ)
と、僕はすっかり魅了されてしまった。
なにより、読者対象が子どもである「おかあさんといっしょ」の雑誌に、まさかの「チェルノブイリ」というドラマの話が出てくるのである。
ここからは僕の想像。
コメントをまとめたのは、ライターなのだから、ライターのさじ加減ひとつで、それぞれのキャラクターに合ったコメントを(子ども向けに)創作または誇張することも可能である。
だが、ゆういちろうおにいさんのコメントだけは、番組でのキャラクターから想像されるものとはまったく異なる内容である。
ライターは、ゆういちろうおにいさんのコメントを最大限に尊重し、生かそうとしたのだろう。それで、「パラサイト」と「チェルノブイリ」という、一見場違いなコメントをあえて残したのである。
おばけを怖がる気弱なキャラという印象とはまったく異なる、社会派な発言に、ライターも魅了されたのではないだろうか。
こういうのを、ギャップ萌えというのだろうか。よくわからない。
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コメント
おかいつ雑誌の存在初めて知りました!チェックしなくては。
出演者の皆さまや番組の作り手にはリスペクトしかないということを前提として、明確なキャラ付けは子どもにとってはわかりやすいのでしょうが、どこかモヤモヤとした気持ちが残ります。わかりやすさだけで子育てしたくないような…。だからこそ、ゆういちろうお兄さんの個性派コメントはなんだか嬉しいです。
(そうは言ってもマンネキャラの杏月お姉さん推し)
投稿: もりもり | 2020年8月15日 (土) 18時09分
「おかあさんといっしょ」は、現実の世界とは無縁の時間が流れているのでは決してなくて、常に現実の世界を意識した作りをしているように思います。ジェンダーとか多様性とか。
つい先日、番組内で「新型コロナウィルスの影響で、みんなの町を訪れてファミリーコンサートをすることができなくて残念です」と、ゆういちろうおにいさんが発言していて、「おかいつ」で初めて公式に「新型コロナウィルスによる影響」について言及した!と、妙に感動してしまいました。
投稿: onigawaragonzou | 2020年8月16日 (日) 10時30分