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入学から就活まで

前回の記事で村木厚子さんのことを書いたが、最近出版された村木厚子さんの著書『公務員という仕事』(2020年7月、ちくまプリマー新書)という本がおすすめである。

とくに、公務員を目指す大学生のテキストとして、これ以上によい本はないと思う。

試みに、本書の「おわりに」で書かれているメッセージを引用する。

「①新しい仕事をするチャンスがあったら引き受けましょう。

これは、自分の大学時代の恩師から教えられたことです。その人の職業的なキャパシティーというのは、専門性・経験の深さと間口の広さの掛け算で決まる。だから、自分の専門性、得意分野を伸ばすことは大事だが、同時に、ほんの少しでもいいから、まったく違う分野を経験してみると、それは、掛け算で効いてくるというのです。だから、新しいこと、苦手なことへのチャレンジは大きなチャンスなのです。

②昇進のオファーがあったら受けましょう

昇進は階段を上ることととてもよく似ています。階段を上ると、背が伸びたわけでもないのに、下の段にいたときには背伸びをしたり跳び上がったりしなければ見えなかったものが自然に見えるようになります。オファーがあったということは、客観的に見て実力がついているということ。自信をもって、オファーを受けましょう。

③ネットワークを作りましょう

仕事はうまくいくこともいかないこともあります。先が見えないこともしょっちゅうです。そんなときに、同じように仕事に取り組む仲間や、経験豊かな先輩とのネットワークがあれば、たくさんアドバイスがもらえます。自分の仕事と全く違う異業種の人に新しい視点をもらったり、みんな同じように悩むんだと連帯感を持ったりというのもうれしいことです。

④家族・家庭を大切にしましょう

これまでの日本社会は、「滅私奉公」などといった言葉にも象徴されているように、職場では家庭のことはあまり見せない、残業も、転勤もいつでもOKといった仕事優先の姿勢が賛美される傾向がありました。しかし、家族・家庭は安定した職業生活の基盤ですし、「仕事」と「家庭」という二つの軸を持つことで、ものの見方が多様になったり、気分転換を上手にできたりします。これからは家族・家庭を大切にしている人が職場でも尊敬されるようにしたいですね。」

この4つは、いちいちうなずくことばかりである。若い人向けの言葉なのだが、すべていまの僕にもあてはまる。つまり、いくつになっても、この4つは大事だということなのだろう。若者だけでなく、中堅やベテランも読むべき本である。

ついでに(といっては失礼だが)もう1冊、おすすめの本は、武田砂鉄『わかりやすさの罪』(朝日新聞出版、2020年7月)である。こちらの方は、実はまだ読み始めたばかりなのだが、僕はこの本を読んで、忸怩たる思いがする。

教員稼業をしていた頃、大学に入学したての学生を対象にした授業「スタートアップセミナー」を担当したとき、人の文章をわかりやすく要約する技術であるとか、自分の考えをわかりやすくプレゼンする技術とか、そういうことばかり教えていた。

しかし本当は、大学というところは、わかりにくいことを勉強するところなのだ。わかりやすいことはよいことばかりではない、ということを学ぶ場のはずである。

その意味で、本来は大学に入ったら、「世の中はわかりやすいことばかりではない」「わかりやすいことには、落とし穴がある」といったこと学ぶ必要があるのだ。だがいつの頃からか、「わかりやすいことは善」という考え方が、大学教育を支配するようになってしまった。

だからいまの僕だったら、大学に入学したての学生を対象にした授業では武田砂鉄『わかりやすさの罪』をテキストにし、就活をしている学生を対象にした授業では村木厚子『公務員という仕事』をテキストにするだろう。ま、そういう機会はこの先永遠に訪れることはないだろうけれど。

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