青表紙の手帳
8月31日(月)
毒蝮三太夫さんの手帳には、
「拾った方を信じます」
と書かれているのを、何かで見たことがある。
夕方、職場を出る頃になって、手帳がないことに気づく。
仕事部屋のどこを探しても、手帳が見つからない。
(おかしいなあ…)
手帳がなければ、生活ができない。
(今日、家に忘れてきたのかな?)
そういえば、職場で手帳を開いた記憶がない。
しかし、家に忘れてきた、というのはありえない。なぜならば、僕のシャツの胸ポケットにはボールペンがさしてあるからである。このボールペンは、ふだんは手帳のカバーのところにさしてあるものなのだ。僕には、手帳を手に取ったとき、無意識に、手帳のカバーにさしてあるボールペンを取り出して、シャツの胸ポケットに移しかえる、という癖がある。ということはつまり、手帳は職場に持ってきている、ということなのだ。
僕は職場での打ち合わせのとき、必ず手帳を持ち歩いている。とすれば、打ち合わせをしたスペースのどこかに、置き忘れたに違いない。今日は、複数の打ち合わせのために職場のいろいろなスペースを行き来したのであった。
そう思って、今日、自分が行った打ち合わせスペースを記憶を頼りにたどってみるのだが、どうも見つからない。
するとそこに、お昼過ぎに打ち合わせをしたときのアルバイトさんが作業をしていた。
「あのう…この辺に手帳が落ちてなかったですか?」
「あ、鬼瓦先生、手帳ですか?お昼過ぎの打ち合わせのときに青い表紙の手帳をお持ちでしたね」
「よく覚えてますね」
僕はその方の記憶力にビックリした。そのアルバイトさんと打ち合わせしたのは初めてなのである。
「ええ、よく覚えてますよ。青い表紙の手帳をお持ちだなあと思って見ていました」
「この辺にありませんよね」
「そうですねえ。見つかったらご連絡します」
「すみません」
ということで、いろいろと打ち合わせをした場所を行脚したのだが、どこにも見当たらない。
(困ったなあ…)
諦めかけたとき、そういえば、もう1カ所立ち寄ったところがあったことを思い出した。
あることを問い合わせるのに、建物の一番端っこにある仮設事務室に立ち寄ったのだった。
急いで建物の一番端っこまで行って、仮設事務室に着くと、事務室は扉に鍵をかける寸前で、パソコン机の上にチョコンと手帳が置いてあったを見つけた。
問い合わせに集中するあまり、手帳の存在を忘れてしまって、そのまま事務室を出てしまったのだ。
僕はホッとして、先ほどのアルバイトさんのところに行って見つかったことを告げると、
「またずいぶん遠くにありましたね」
と、汗だくの僕に言った。
いまだにスマホに予定を書く習慣がなく、やはり信じられるのは手帳である。
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