ドリフ軍隊論
10月21日(水)
寺尾紗穂『南洋と私』(中公文庫)を読む。
相変わらず文章がすばらしく、つい引き込まれる。
この本の中で寺尾さんが、「ドリフ大爆笑」の主題歌、
「ド、ド、ドリフの大爆笑~♪」
が、戦時中に流行した「隣組」
「とんとん とんからりんと 隣組~♪」
の替え歌であることを知り、驚いたという記述がある。
「戦時の生活を象徴するメロディーが戦後、お笑い番組の中で採用され、私が思っていたように「ドリフのオープニング以外のなにものでもないはず!」と広く思われている戦後とはなんだろうか。単純に曲がいいから、いろいろ使われるんだろう、小難しいことじゃない、そう言われればその通りかもしれない。でも私はやっぱりひっかかるのだ。自分たちはだまされていた、軍部が全部悪い、自分たちは無力な被害者にすぎなかった、そう決め込んで、かつて提灯行列や相互監視や密告によって銃後を、戦争体制を支えていた人たちが、戦後、まんざらでもない、と「民主主義」社会に溶け込んでいく。相反するはずのものへといつの間にか移動しているその気持ち悪さ。否定しようのない連続。そういう気持ち悪さを、隣組とドリフの連続に感じるのは、考えすぎというものだろうか」(70頁)
これは決して考えすぎではない。「ドリフ大爆笑」のオープニングが、「隣組」の替え歌であるのは、ただたんに曲がいいから、という理由ではない。
「ド、ド、ドリフの大爆笑~♪」
よりも前に、もう一つ、「ドリフ大爆笑」のオープニング曲があったと記憶する。
「ド~リフのド~リフの大爆笑♪」
という歌なのだが、これは、やはり戦時中の、
「月月火水木金金♪」
の替え歌である。僕の記憶では、「隣組」の替え歌バージョンは、2代目のオープニング曲なのである。
つまり、一貫して戦時中の歌を替え歌にしていたのだ。
なぜあえて戦時中の歌を替え歌にしているのだろうかと、僕はずっと気になっていた。
で、僕は、「ドリフターズは軍隊である」という仮説に行き着いた。
ドリフターズのリーダー、いかりや長介と、ほかのメンバーの関係は、軍隊における上官と部下の関係になぞらえられるのではないだろうか。
「8時だよ!全員集合」のコントでよく、リーダーのいかりや長介がメンバーが横並びで整列させて、
「やすめ!きょーうつけい!」
と号令する場面を何度も見た記憶があるのだが、なんとなく軍隊の整列を連想させる。
それぞれのキャラクター設定も、部下に対して統率をとろうとする上官と、それになんとか反発してやろうという部下たち、という関係を思わせる。
というわけで、戦時中の文化が、1970年代くらいに、ドリフターズが好きな子どもたち(僕もそのひとりだが)の間で、知らず知らずのうちに継承されていったのではないかと感じるのである。
これが、ドリフターズの先輩格にあたるクレージーキャッツになると、ドリフほどの軍隊性は感じない。むしろ戦後を象徴するようなグループである。
植木等の「無責任シリーズ」は、高度経済成長期を象徴するような映画のように思えるし、クレージーキャッツは、ドリフターズほど、集団行動をとらず、むしろ個人主義的というイメージがある。まあこれも、僕の思い過ごしかもしれないのだが。
時代はやがて、クレージーキャッツからドリフターズへとバトンタッチしていくのだが、そこでなぜ復古的なドリフターズが受けたのだろうか?
このあたりのことは、もう誰かとっくに考察しているのかもしれない。
ちなみに「欽ちゃんファミリー」は、学校の先生と生徒の関係、「オレたちひょうきん族」はヤンキーの集まり、になぞらえているのだが、それはまた別の話。
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コメント
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(おまけ)ヒゲダンスの原曲
https://youtu.be/XKHHxy_jMBU
志村加入後のドリフはめちゃくちゃファンキーだぜ、ワーォ!
投稿: ワーォこぶぎ | 2020年10月21日 (水) 21時15分
なるほど、志村けんの音楽センスがドリフを変えたわけですね。これは興味深い。
投稿: onigawaragonzou | 2020年10月21日 (水) 21時32分
興味深いです。
「ザ・ドリフターズの 極楽はどこだ!!」が1974年
「陸軍落語兵」が1971年
偶然なのか当時の時代背景なのか・・・。
歴史上の人物の評価が時代時代で逆振れする現象とも似ているような・・・。
つくづく妙な国です。
投稿: 江戸川 | 2020年10月22日 (木) 16時31分