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決め手は松山省二

11月2日(月)

ちょっと仕事の関係で、岡山県の子どもが戦時中に書いた文章を読んでいる。基本的に丁寧な字で書いていて読みやすいのだが、鉛筆で書いてあるので、判断に困る文字もある。

ある一文の語尾に、

「○○ですう-」

と書いてある。「○○です」の語尾を伸ばしたのかなあ、と最初は思ったのだが、ちょっと現代っぽい言い回しである。

で、その部分をよ~く見ると、「ですう-」ではなく「ですら-」と書いているようにみえる。

「『ですらー』ですかね」

「たしかに、『ですらー』と読めますね」

「しかし、そんな言い方をしたんでしょうか?方言かなにかですかね?」

「うーむ。岡山弁にそういう言い方があるのかなあ…」

岡山弁で本当にそんな言い方をするのか、よくわからない。でも、なんか聞いたことがあるぞ。

どこかで聞いたぞ。うーん。うーん。うーん。

「思い出しましたよ!映画『砂の器』ですよ!!!」

その場にいた他の人たちは、きょとーんとしている。

「三木謙一の養子が、三木謙一の遺体を確認したときに、たしか自分は岡山で雑貨店をやっているって言ってましたよね!ほら、松山省二が演じてた!」

ますます周りの人はポッカーンである。

「たしか松山省二が岡山弁でしきりに「ですら」「ですら」と言ってましたよ!」

いったい何を言い出すんだ。とうとうこいつ、頭がおかしくなったか、という視線が向けられた。もちろん、被害妄想だが。

だいたい松山省二って誰だよ!という顔をみんながしている。松山英太郎の弟ですよ、と言いたかったが、ますます周りがポッカーンとなるのが目に見えていたので、言うのを思いとどまった。

そうは言ってみたものの、自信がない。

さっそく家に帰って、松本清張原作・野村芳太郎監督の名作映画『砂の器』(1974年)のDVDを見返してみることにした。

早送りして、松山省二が出ている場面をまず確かめる。すると…。

「うちは養子ですら。父には子どもがねえんですら。私は、はじめ店員で雇われとったんじゃが、父の希望で養子になって、同じ町内から妻を迎えたんですら」

「今年の6月の初め、(父が)のんびり旅行がしてえと言うもんですから、わしら夫婦も賛成したんですら」

「たしか、12,3万だったと思いますら」

なんと!「ですら」のオンパレードではないか!

というか、俺の記憶力、すごくない??

いやそれよりも、この話のすごいところは、もともとこの『砂の器』の最大の見せ場は、方言が捜査の決め手になる、というところなのだが、その映画が決め手になって、語尾の「ですらー」が岡山弁だと断定できたことである。

こういうの、なんて言うの?「メタ『砂の器』」?ナンダカヨクワカラナイ。

あともう一つ、岡山出身の長門勇が、映画やドラマの中で、「ですら」と言っていた記憶がある。映画「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」だったか、あるいは「横溝正史シリーズ」の一連の作品を見れば、どこかで必ず「ですら」と言ってるはずだ!しかしそこまでして確かめる時間が、今の僕にはない。でも、絶対言ってるぞ!

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