挽歌考
録画しておいた香港映画「男たちの挽歌Ⅱ」を見た。「Ⅰ」は見ていない
以前にも書いたが、僕は「香港ノワール」というジャンルの映画を見たことがない。
いや、あるぞ!「インファナル・アフェア」は見たことある。「男たちの挽歌」が香港ノワールのハシリだとしたら、「インファナル・アフェア」はその完成形、という位置づけだろうか。
「男たちの挽歌」の原題は「英雄本色」。僕はこの邦題がとてもいいタイトルだと思うのだが、そう思った理由は、タイトルに「挽歌」がついているからだと思う。
よくよく考えてみれば、「挽歌」って、日常生活で使う言葉ではない。どちらかといえば古語である。もともと中国の古典に出てくる歌の分類の一つで、死者を葬る時に棺を挽(ひ)く者が謡う歌、葬送の歌、死を悲しむ歌を意味する。『万葉集』では、雑歌・相聞歌とともに3大部立の一つであり 、古今集以後の哀傷歌にあたる、と辞書には説明がある。
つまりほとんど死語といってもいいのだ。挽歌だけに。
いまで言ったら何だろう?鎮魂歌(レクイエム)か?だが「男たちの鎮魂歌(レクイエム)」よりも、やはり「挽歌」の方がしっくりくる。
そう思うのは僕だけかもしれない。なにしろ僕は、以前にも書いたが「刑事コロンボ」の「祝砲の挽歌」という邦題が、大好きなのだ。
‘By Dawn's Early Light’という原題に、ドラマの内容を加味して「祝砲の挽歌」という邦題をつけたセンスがすばらしい。邦題史上、これを超えるものはないのではないだろうか。
というわけで僕は「挽歌」という言葉に弱いのである。
日本の映画なりドラマなり、あるいは海外作品の邦題なりに、「挽歌」という言葉はどのくらいあるのだろうか。
インターネットで調べてみると簡単にわかることだが、原田康子の小説に「挽歌」というタイトルのものがあり(1956年)、1957年と1976年に映画化されている。テレビでもたびたびドラマ化されている。これが、タイトルに「挽歌」を使った最初だろうか。
ドラマでいうと、山田太一脚本の「チロルの挽歌」(1992年)というNHKドラマがある。北海道芦別市を舞台にした、高倉健主演のドラマである。ちなみに僕は未見である。
ちょっと話がそれるが、このドラマはテーマパーク「チロリアンワールド」の建設をめぐる物語なのだが、芦別市の「カナディアンワールド」がモデルとなっている。20年以上経って、大林宣彦監督の映画「野のなななのか」(2014年)の中で、カナディアンワールドが「町おこしではなくて、町こわしね」と語られていることに、ある種の感慨を禁じ得ない。「チロルの挽歌」もいずれ見なければならない。
それはともかく。
あと、何かなかったっけなあと必死に思い出してみたら、思い出した。テレビ朝日のドラマ「特捜最前線」に、「挑戦II・窓際警視に捧げる挽歌!」(第460回、長坂秀佳脚本、天野利彦演出)というのがあった。「窓際警視」とは、長門裕之演じる蒲生警視のことで、「特捜最前線」では準レギュラー的存在だったのだが、その殉職をめぐる物語である。これも子どものころ見ていて、よく覚えいてる。
「テレビドラマデータベース」で検索すると、「挽歌」がタイトルにつくドラマがけっこうあるのだとわかった。だがいまあげたもの以外に、あまり印象に残っているドラマはない。
そうそう、歌では北原ミレイの「石狩挽歌」(作詞:なかにし礼、作曲:浜圭介)があった!これは名曲だった。さすが、なかにし礼である。
あと、調べてみたらドラマ「さすらい刑事旅情編」(1988年)のテーマ曲が堀内孝雄&チョー・ヨンピル「野郎(おとこ)たちの挽歌」(作詞:荒木とよひさ、作曲:堀内孝雄、編曲:佐々木誠)というそうなのだが、僕は聴いたことがない。香港映画「男たちの挽歌」の日本公開が1987年だったから、その影響を受けたタイトルであろうか。ちなみに僕は「野郎」と書いて「おとこ」と読む人や、「漢」と書いて「おとこ」と読む人のことをあまり信用していない。
「挽歌」という言葉に反応するのは、僕くらいなものだろうか。
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コメント
「男たちの挽歌」を見た後は、この映画もいかが。
https://youtu.be/4hvTCEc9csA
投稿: 🐢 | 2021年1月30日 (土) 12時45分
炸雞特攻隊 電影預告
https://youtu.be/63sOgco48sw
こっちの予告編の方が、より雰囲気がでます。
投稿: 🐢 | 2021年1月30日 (土) 12時58分