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オンラインはつらいよ

3月2日(火)

あまりに忙しいのだが、なんでそんなに忙しいのかが、よくわからない。

朝早く家を出て、2時間以上かかって職場に到着し、9時半からは、月に1度の僕が司会のオンライン会議である。この会議の前日は、眠りが浅くなるのだ。

ぼんやりとした頭で会議をなんとか終え、提出が遅れた書類を書いたり、メールの返信を書いたりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。

午後2時に電話が鳴った。

「2時から打合せですよ」

そうだった!すっかり忘れていた。というか、手帳に書いておくのを忘れていた。

あわてて打合せの部屋に行き、

(はて、なんの打合せだろう?)

そういえば打合せの内容を聞いていなかった。

ぼんやり座っているうちに、打合せは終わった。

(うーむ。結局何の打合せだったのだろう?)

ナンダカヨクワカラナイまま、仕事部屋に戻って、ふたたび諸々の仕事をする。

(そうだ!今日はもう1件、オンラインの打合せがあるんだった!)

奇跡的にそのことを忘れていなかったのが我ながらスゴい。

何の打合せかというと、数日前にとあるカルチャースクールから、

「来年度、オンライン講座をやってほしい」

という仕事の依頼のメールが来たのである。まったく面識のない方だったが、どうやら僕の本を読んでくれて、白羽の矢が立ったらしい。まあ、前向きに考えましょうと返信したら、じゃあオンラインで打合せをさせてくださいというので、この日の夕方に設定してもらったのだった。ま、打合せと言いつつ、僕が商品になるかどうかのオーディションなのかも知れない。

Zoomをつなぐと、おとなしそうな若い男性が画面にあらわれた。

「ぜひオンラインで講座をお願いしたいと思いまして…」

「私なんかでよろしいんでしょうか。私はお客さんが集まらないことで有名なんですよ」

「はぁ…。そのことなんですが…。実は当社でオンライン講座を始めたのは、昨年からでございまして…」

「コロナの影響ですね」

「ええ。しかし宣伝がなかなかうまくいかないのか、苦戦しておりまして…どんなに人気の講師でも、10名集まれば御の字というような具合で…」

「そうですか。受講される方はご高齢の方が多いのですか?」

「ええ。平日の日中にお時間がある方といえば、どうしてもご高齢の方が多くなってしまいます」

オンライン講座がうまくいってない理由がわかった。ご高齢の方は、Zoomに慣れていないのではないだろうか。Zoomを使いこなせるご高齢の方のみが、オンライン講座にたどり着くことができるのだ。

そういえば、前の職場にいた時、市内にある同じカルチャースクールで講師をしたことを思い出した。そのカルチャースクールは各地方都市に教室を持っていて、全国展開しているのだ。当時はもちろん対面だったけれど、あの時は受講生が少なくて、3名くらいだったんじゃないかな。そのことを話し、

「あの町のカルチャースクールはどうなりました?」

と聞いたら、

「…つぶれました。業績不振で」

「………そうでしたか……」

そりゃあそうだろうな。考えてみれば、いまどき、YouTubeやら何やらでタダで動画を見たりすることができるのだ。お金をとって、それに見合うだけの90分の話をするためには、かなりの付加価値が必要なのではないだろうか。

なにしろ1回の受講料が、劇場で1本の映画を見るよりも高いのである。俺だったら絶対映画を見に行くよな。

それが3回連続講座ということになったら、ほとんど福沢諭吉の世界である。

つまり講座の回数も、考えどころというわけだ。

ちなみにギャラは歩合制である。集まったら集まっただけ、受講料の何パーセントかをもらえるシステムのようである。

受講生が3人とかだったら、赤字になるぞ。

「連続講座ではなく、単発の講座でもいいんですか?受講する方にとっては、その方が受講料を抑えられますよね」

「そうですね。その場合は『特別講座』ということになります」

どうやら、1回だけで終わりにするというのは、すごく有名だったり、売れていたりする人が、1回だけ特別に90分講義をしてくれるという、「ありがたみ」の深い講座、ということのようだ。

僕の拙い話にそんな「ありがたみ」なんぞはないので、「特別講座」なんて恥ずかしくて名乗れない。

「ただですねぇ」

「なんです?」

「オンライン講座を始めたおかげで、全国から受講生が来るようになりました。それが、対面講座とは大きく違うところです」

「そうですか。たしかにオンラインだったら交通費がかかりませんものね」

「…それでも、受講生はうまくいって10名ちょっとなんです…」

「はぁ…そうですか…」

いくら受講生が全国規模に広がったとしても、実際に受講するのがやっぱり3人だった、ということになったら、ますます目も当てられないことになる。というか、もうかつてのようなカルチャースクールは流行らないんじゃないだろうか。新しいビジネスモデルを考えた方がいいんじゃないの?

はたしてこの仕事、引き受けるべきか…?

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コメント

クソどうでもいい仕事の理論の本が、クソどうでもいい仕事のせいで、まだ最後まで読めていない。

この本自体がクソどうでもよくなってきたが、多忙極める鬼瓦さんには「セルフドライヴィング・アンド・ペーパープッシング・エクゼクティブ・チェアパーソン・フォー・インターナショナル・ブルシット・カンファランス・アンド・カルチャースクール」(SPECIBCCS)の肩書きをあげるので、クソどうでもいい仕事により一層励むように。

こちらも、肩まで雪に埋まったZ山頂の地蔵に長久命のスジョンちゃんのトイレ祈願に行くとか、週末は要約筆記通訳(いわゆるノートテイク)の遠隔支援ボランティアで朝からオンライン三昧と、忙しかった。

その上、やきそばかおるの推すラジオ番組の多さに追い付けず、ラジオ番組を1.25倍速で速聴する日々が続いている。だいたい「必聴ラジオ2021」の全番組をやっとチェックしたら、今度は日経エンターテーメントがラジオ特集を出して、そしてブルータス、お前もか。

さしずめ、ラジコ・プレミアムとコロナ禍が生み出した、新しいラジオ生活様式の表れなのだろう。

それにしてオンライン会議の全盛で一億「自宅放送局」化しているこの時代に、一番タリナイものは何か。

ずばり「カフ」である。ラジオ局のスタジオの机上にある、マイクの音声を入れたり切ったりする、あのレバーだ。

つまらないZーム会議も、リスナーが3人しかいないオンライン講座も、カフの上げ下げさえできれば、ラジオDJ気分を満喫できるのである。

さっそく「カフボックス」をアマゾンで買おうとしたら、これが何万円もしてめちゃくちゃ高い。かわりに「ONAIR」の赤色ランプなんぞはゴマンと販売しているが、こちとらアナウンサーとディレクターを兼務なんだから、自分でキューランプを灯してからしゃべっていたら、クソどうでもいい余計な仕事が増えるだけだ。

いろいろ調べた結果、カフなんぞなくても、パソコンで「ミュート」のショートカットボタンを押せばすむらしいが、どうにも味気ない。

A月電子でミキサーの自作キットを通販しているから、これを流用できないか?とか

ボリュームがダイアル回しになるのが気に入らないが、アンプで代用するのはどうか?とか

いっそ、トークバックボタンボックスにしちゃえば押しスイッチだけで作れそうだぞ。ま、トークバックする相手はいないけど。とか

「左手デバイス」をパソコンに取り付けて、ショートカットのショートカットをボタン登録できないか、とか

棚の奥で埃をかぶっている「電車でGO」専用コントローラーのレバーをカフ代わりにできたらいいのに、とか

ん? もしかして、

クソどうでもいい仕事を自ら進んで増やそうとしているかも?

投稿: 🐢 | 2021年3月 3日 (水) 10時52分

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