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謎のカンノさん

謎のナトリさん

3月27日(土)

実家に行くと、母が帰りにいつもいろいろなものを持たせてくれる。それがけっこういいお菓子だったりすることがあるのだが、そういうものはたいてい、母が買ってきたものではなく、「カンノさん」という母の友人が母にくれたものをお裾分けしてくれるものだったりする。

この「カンノさん」という名前を、僕は10代の頃から母から聞いていたし、いまも実家を訪れるたびに「カンノさん」の名前を聞くのだが、実は僕は、「カンノさん」に会ったことがない。

これまでの話を総合すると、カンノさんは、母の中学時代の同級生である。母の故郷は、いまの家から遠く離れた、人口が1万人に満たない陸の孤島のような小さな田舎町である。中学卒業後、ふたりは別々の道を歩み、それぞれ社会人となって結婚したのだが、まったく偶然なことに、結婚後も家が近所だった、というのである。そんな奇縁もあって、いまでもよく会ったりしているというのだ。

これだけ頻繁にカンノさんの話を聞きながら、僕はそのカンノさんに会ったことがないのである。

次第に僕は、カンノさんの実在を疑うようになった。カンノさんは、本当に存在するのだろうか?

さて、昨日は娘の3歳の誕生日だった。

3歳になったこともあり、今日は実家の母のところに娘を連れて行ったのだが、そこでお昼を食べていると、玄関のベルが鳴った。

母がインターホン越しに、来客の姿を確認すると、

「あら、…あんたも玄関に来なさい。カンノさんよ」

なんと、カンノさん!

玄関に出ると、まさにカンノさんがそこに立っていた。

「いつも母がお世話になっています」

僕は初めて、カンノさんに挨拶をした。

カンノさんは、僕につられてついてきた娘を見つけて、

「○○ちゃんね、大きくなったわねえ。抱っこさせて」

と、娘を抱っこしたのである。

娘も突然のことで戸惑っていたが、母は自分の孫の写真を、カンノさんに折に触れて見せていたのだろう。

それからカンノさんは、玄関先で二言三言、母と会話を交わして、帰ってしまった。

「家に上がってもらわなくてよかったの?」

「いいのよ。いつもそうしているから」

母は、カンノさんからもらったとおぼしきレジ袋を手にしていて、中から何かをとりだした。

「これ、カンノさんからもらった高級食パン」

見ると、たしかに高級そうな食パンである。

「半分持って行きなさいよ」

ということで、僕は高級食パンを4切れほど、お裾分けにあずかったのだった。

おいしいものが手に入るとお裾分けをする、というのが、むかしからの母とカンノさんの関係だというのを、僕は目の当たりにして、カンノさんが実在することを確認したのである。

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