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原稿ため込み党のつむじ曲がり

3月3日(水)

僕の原稿が載ったアングラ会誌と、やはり僕の原稿が載っている、ごくわずかの人の目にしか触れないであろう小冊子が、同じ日に届いた。いずれも、僕が「前の勤務地」に向けて書いた原稿である。

いずれも、A4用紙にして1枚程度の短い分量だが、僕はこれらを、「前の勤務地」への恩返しのつもりで書いた。僕は、こういうところに書く原稿が、何よりも好きである。

僕が尊敬している大林宣彦監督は、商業映画を作るかたわらで、インディペンデント映画というのか、アングラ映画というのか、プライベートフィルムというのか、とにかくお客さんが入るのを度外視した映画を作ることに愛着を感じていたと想像するのだが、僕もたぶんその影響を受けている。限りなくプライベートに近い媒体に書いた原稿に、愛着を感じるのである。

つい先日、「発売前から重版出来」という本が手元に届いた。たぶん商業的に成功した本なのだろう。もちろん僕もその本の中で、自分の持てる力をふりしぼって原稿を書いたのだけれど、あまり読み返したいとは思わない。

でも僕は、その原稿の中に、「前の勤務地」への恩返し的な件(くだり)を、むりやり書き込んだ。それを書かないと、自分らしさが出ない、と思ったからである。

大林監督の映画『廃市』の中に、柳川の旧家の娘である安子が、ピアノの楽譜を持って屋敷に戻る場面がある。それを見かけた居候の大学生・江口が、「安子さん、ピアノを習っているんですか?」と聞くと、

「他の人はお茶とかお華とかを習っているでしょう?そこで私は、ちょっとつむじを曲げてみたわけ」

と答える。福永武彦の原作にはない台詞なのだが、僕はなぜかこの、なんということのない場面が印象に残っている。つむじを曲げることこそが自分らしさなのだということに、気づかせてくれたからであろう。

「他の人はみんなまっとうな原稿を書いているでしょう?そこで私は、ちょっとつむじを曲げてみたわけ」

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