アカデミー賞改革
TBSラジオ「赤江珠緒 たまむすび」2021年4月27日(火)放送分の「アメリカ流れ者」のコーナーで、町山智浩さんが言っていたことが印象的だったので、心覚えに書いておく。
今年(2021年)の米国アカデミー作品賞は、『ノマドランド』に決まり、監督賞は『ノマドランド』を監督したクロエ・ジャオという、中国で生まれ、アメリカ合衆国で活動する女性の監督が受賞した。
考えてみればこれは、スゴいことである。
去年(2020年)は、韓国映画の『パラサイト』がアカデミー作品賞をとり、これもまた快挙であった。
なぜこういうことが起こったのか?
実は2015年のアカデミー賞で、ノミネートされた人が白人のしかも男性ばかりという事態になってしまった。このとき、アカデミー賞はものすごく批判されて、「一体、どうしてこんなひどいことになっているんだ?」ということで調べてみたら、その時のアカデミー会員の76パーセントが男性。94パーセントが白人。平均年齢が60歳ぐらいというすごい構成になっていたことがわかった。
で、「これはなんとかしなければ」ということで、アカデミー協会が世界中の人たちを対象に会員を増やしていったところ、5年後の現在は会員の40パーセントぐらいが非白人となり、女性の比率も45パーセントを超えた。
2015年の時には6000人ぐらいだった会員が、いまでは1万人くらいいる。4000人も増やしたのである。しかも、これまではハリウッドで働く人たちが主な投票者だったのが、いまではハリウッド以外のアジアやアフリカ、イスラム教国など、全世界の人たちを会員にしていった。もうすでにアカデミー賞はハリウッドの内輪の賞ではなく、世界を代表する映画人たちの投票によって決まる賞になったのである。だから『パラサイト』が去年、受賞し、今年は『ノマドランド』が受賞できたのである。
やはり意志を持って、その会員の人口比、人種比、国籍比みたいなのを変えていくということを示したことがこのような結果になった。つまり、変えようと思えば、変えられるのだ。変わったからこそ、こういう受賞結果になったのである。
ところで今回、フランシス・マクドーマンドさんが3回目の主演女優賞を『ノマドランド』で獲得したが、彼女が2回目に『スリー・ビルボード』で取った時、彼女は受賞のときに「Inclusion Rider」と言った。「Inclusion Rider」というのは、付加項目を契約条項に入れるという意味で、俳優たち、特にスターたちが映画に出る時に、かならずスタッフの中でマイノリティーや女性の比率を増やすよう努力をするという条件を作品のプロデューサーに飲ませるということをしてきたのである。
こうした地道な活動のおかげで、受賞した作品はもちろん、映画の内容自体も変わっていくことになった。つまり世界が変わっていったのである。これは、そのハリウッドという一職場だけの問題ではなくて、どこの職場でもできることである。そうしたことを、アカデミー賞の改革から学ぶことができるのだ。
…以上がラジオでのお話。
どこかでこの話が使えないだろうかと思い、忘れないうちに記録にとどめておく。
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