会談
「大統領!」
「何だ?」
「いま、先方の外務省から連絡が来て、いまからそっちに行くと」
「何だって?こんなコロナが蔓延している時期に対面会合だと?正気の沙汰とは思えん。しかも私も先方も年寄りだぞ!リモートでできんのか?」
「はあ、しかし先方がどうしてもというもので…」
「わけがわからん」
「しかも、80人来るそうです」
「80人?密だ密密密!」
「で、これは申し上げにくいのですが…」
「何だ?」
「ぜひ晩餐会をしてほしいと…」
「バカか?この時期、晩餐会をするバカがどこにいる?」
「はぁ、それがどうにもしつこくて」
「なんで晩餐会なんかしたがるんだ?」
「ええ、何でも先方の国では、会食しないと話し合いができないという風習があるそうで」
「どんな土俗的な風習だよ!」
「どうやらそれが世界の常識だと思い込んでいるようで…」
「うーむ。じゃあ英語が話せるのか?」
「いえ、まったく話せないそうです。しかも先方のリーダーってのが、とにかく座持ちの悪い人だそうで…」
「なんだよ!じゃあ会食する意味なんかないじゃん!」
「いかがしましょう?」
「そんなもん、クラスターが起こるぞ!晩餐会は中止だ中止!」
「しかしそれでは先方の顔が立ちません」
「じゃあ、最初に1対1で挨拶するときに、形ばかりの食事を出そう」
「そうすると、時間的にはランチになりますね」
「…そうだな…。ほら、前任のヤツがやってただろう?」
「なんです?」
「ビジネスランチとか体裁のいいことをいって、ハンバーガー食べてただろ」
「ああ、そうでした」
「あれでお茶を濁そう」
「なるほど、それはいい考えですね。ハンバーガーだったらシェフの手をわずらわせないし」
「それに前例もあるしな。失礼には当たらないぞ」
「これは一石二鳥ですね」
「ただし俺は食わんぞ。マスクを外してハンバーガーを食べながら談笑したなんていったら、世界中の恥さらしだ。国民にも示しがつかん」
「おっしゃるとおりです」
「むしろマスクを二重にする!」
「それがよろしいかと」
…………………
1対1の会談は約20分間行われ、家族や人生経験などプライベートの話題が中心となったという。ただ、首相は「(ハンバーガーに)全く手をつけないで終わってしまった。そのぐらい熱中していた」と記者団に語った。(○○新聞)
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コメント
やって来た東の国のお殿様から「ハンバーガーはないか」と所望された、西の国のお殿様。
西の国のお殿様は年末年始に早々とワクチンを2回接種して、贅を尽くしたフルコースを準備していたのだが、賓客のご所望とあらば仕方ない。
白いお城の御台所人も、東のお殿様に何かあっては一大事と、最高級Tボーンステーキ用牛肉から骨を取り除き、わざわざすり身にして蒸し上げて、その上にトリフだキャビアだと世界中の珍味を使った特製ソースをかけて、国の威信をかけた超グルメハンバーガーを作り上げた。
びっくりしたのは東のお殿様。こちらも領民に先んじて既にワクチンを2回接種済だから、マスクなんぞ最初からせずに本場のハンバーガーを堪能しようと思っていたが、目黒で食べたハンバーガーとは全然違う。
これではナイフとフォークでないと食べられないし、第一、年寄りがこんなにたくさん肉を食べては、帰りの飛行機で胃がもたれること間違いない。
そこで昔話に夢中なふりをして、手をつけずにおくことにした。
「どうもお口に召しませんでしたかな。次は軽めにパンケーキでも用意しましょう。やはり目黒に限りますか?」
「いえいえ、パンケーキはニューオータニに限る」
投稿: 🐢 | 2021年4月19日 (月) 21時58分