何度でも訪れたくなる
4月14日(水)
恒例のひとり合宿である。
抗原検査は陰性だったので、晴れてひとり合宿が認められた。
僕にとっては、職場のことを気にしなくてもよい3日間なのであるが、それでも職場からひっきりなしにメールが届き、「添付の書類の確認をお願いします」とあるので、いちいち確認しなければならない。まあそういう役目なので仕方がない。
ひとり合宿のときには、できるだけ職場の仕事のことは考えず、本を読むことにしているのだが、今回まず読んだのは、戦場ジャーナリストの桜木武史さんが文章を書き、『ペリリュー』でおなじみの武田一義さんが漫画を描いた『シリアの戦争で友だちが死んだ』(ポプラ社、2021年)である。
少し前に、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」の「大竹メインディッシュ」のコーナーのゲストで桜木さんが出演していて、その話がとても惹かれる内容だったのと、文章に添えて武田一義さんが漫画を描いているということに惹かれて、読むことにしたのである。
桜木さんは戦場ジャーナリストなのだが、それだけでは生活できないので、ふだんはトラックの運転手をして生計を立てている。で、あるていどお金が貯まると、戦場に取材に行くというのである。だが、戦場で取材したことを記事にしても、それだけで食べていくことはできないので、次の取材ができるようになるまで、やはりトラックの運転手の仕事をする。
こうなると、職業は戦場カメラマンなのか、トラックの運転手なのか、厳密な定義に即して考えようとすると難しくなるわけだが、要はどこに自分のアイデンティティーを求めるか、という問題なのだろう。以前に読んだ『石の肺』の作者、佐伯一麦さんも、数々の文学賞をもらっているにもかかわらず、小説だけでは食べていけないので電気の配線工事の仕事で生計を立てていたというし、本当に好きでないと、そういう生き方はできないなあと、我が身を振り返ってふがいなさを反省することしきりである。
この本で描かれているシリアの状況は、それはそれは酷いものである。桜木さん自身も、取材中に戦闘に巻き込まれて、銃弾を右下顎に受けて顎を粉砕してしまう。まさに死と隣り合わせの経験を何度もしているのである。
それにもかかわらず、シリアに何度も足を運びたいというのだ。これだけ酷い目に遭っても、なぜまたシリアに行きたいと思うのだろう。
僕の友人の中にも、かなりツラい思いをしているにもかかわらず、同じ国に何度も行ったり、さらにはそこに住み着いたりする人がいたりする。かくいう僕も、韓国がそれにあたるだろう。
僕の場合は、いっぺん見てしまったものは、見届けなければならないという心理がはたらいているような気がする。ジャーナリストはそこからさらに進んで、自分が見届けたからには、それを伝えたいということなのだろうと思う。
文章の間にはさまれる、武田一義さんの漫画が、桜田さんの文体とマッチしていて、とてもよい。
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