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五輪の悪口は言わない

4月28日(水)

今日も打ち合わせと書類書きであっという間に1日が終わった。しかも大型連休前ということもあり、駆け込みで提出しなければならない書類も多くて、さすがに疲れた。

ところで、自分の職場で、東京五輪のチケットを購入している人が何人かいることがわかったのは、ここ最近である。

僕はまったく興味がないので、チケットを買う人ってほんとうにいるんだ、と驚くばかりなのだが、いやむしろ、世の中には、オリンピックを純粋に楽しみにしていた人が多く、五輪反対派の僕などは少数派なのではないか、とすら思えてくる。

いつも物品購入の手続きなどでお世話になっているHさんも、そのひとりである。

たまたま今日、物品購入についての打ち合わせをしていると、オリンピックの話になった。

「これ、米国から取りよせることになるんですけど、こんな時節柄ですからねえ。コロナの影響で、納品は夏くらいになりそうです」

「そうですか。じゃあいまから発注しておいた方がいいですね。コロナがなかなかおさまりませんからねえ。夏ごろというと、オリンピックなんて、ほんとうにできるんですかねえ」

僕はちょっとオリンピックに対して批判的な感じで言おうとしたら、Hさんは少し悲しい顔をした。

「そうですねえ。せっかくチケットを買ったので、やってほしいんですけどねえ」

「えっ?チケットを買ったんですか?」

「ええ」

「高かったでしょう?」

「いえ、マイナーな競技ですから、そんなでもありません」

何度も「マイナーな競技」というものだから、気になって仕方がない。

「差し支えなければ、チケットを買った競技を教えてくれませんか?」

「…カヌーです」

「カヌー?!」

…たしかにマイナーな競技である。カヌーと言われて、そこから話を膨らませるのは至難の業である。

「どうしてまたカヌーを観ようと思ったんですか?」

「実はうちの子どもが、昨年まで中学生だったんですけど、カヌー部だったんです」

「カヌー部!」

「で、中学生最後の思い出に、ぜひオリンピックのカヌー競技を見せてやりたいと思いまして、それでチケットを買ったんです」

「なるほど」

それを聞いて僕は、ぼんやりとあることを思い出した。ずっと以前に聴いたTBSラジオ「伊集院光とらじおと」のゲストで、たしかリオ五輪のときに「何らかの船に関する競技」でメダルを取った日本人選手が出演していなかったっけ?あれはたしかカヌーだったような??内容はすっかり忘れてしまったが、そのときの話が意外とおもしろくて、スポーツ嫌いの僕でも、マイナースポーツを応援することも悪くないな、と感じたほどだった。

僕は当てずっぽうで言ってみた。

「たしかカヌーは、前回のオリンピックで日本人選手が話題になりませんでした?」

「そうです!羽根田卓也選手です。カヌーの中でもスラロームという競技で、日本人で初めて銅メダルを取ったんですよ」

「あのときけっこう話題になりましたよね」

よかった。当てずっぽうに言ったのに、奇跡的に会話がかみ合った。

(後で調べてみたら、羽根田卓也選手は、たしかに「伊集院光とらじおと」の2017年12月18日のゲストに出ていたのだった)

「子どもに、本物のカヌー競技を見せてやりたかったんですけどねえ。去年、オリンピックは1年延期が決まるし、子どもは高校になって別の部活に入ってしまうし…しかもそれがまたマイナーなスポーツで」

出た!またマイナーなスポーツ!気になって仕方がない。

「差し支えなければ、今度はなんの部活に入ったんですか?」

「…水球部です」

「水球部!」

これまたたしかに、地味な運動部である。というか、水球って団体競技ではないか。試合ができるくらいメンバーが揃っている、というのもすごい。

「どうしても水に縁があるみたいなんですよねえ」Hさんがなかば自嘲気味に言った。

「でもいまは部活動は自粛なんじゃないですか?」

「いえ、ソーシャルディスタンスをとりながらの陸トレをやっているみたいです」

「なるほど。ところで水球も、オリンピックの競技種目でしたっけ?」

「そうです」

そうか。マイナースポーツに惹かれるHさんのお子さんにとっては、オリンピックは自分のやっているスポーツが日の目を見る貴重な機会なのかもしれない。

本来ならば、そういう人にこそ、心をときめかせるオリンピックでなければならない。

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コメント

ワールドマイナースポーツ
https://www.youtube.com/channel/UC4MQndq2TArDBKMCjTFFCMg

わたくしめのおすすめは「エクストリームアイロニング」です。
https://youtu.be/sfXqJ5WYPp8

夏冬恒例だったG山合宿(本年度開講せず)では、カヌーもスラックラインも雪板(ユキイタ)も雪上バナナボートもできますので、五輪を見逃した場合はぜひ。

投稿: 🐢 | 2021年4月29日 (木) 09時27分

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