根回し文化
よくも悪くも、この国には「根回し文化」がある。「根回し」とは、事前調整のこと。
とくにここ最近痛感していることだが、組織の中で何かを提案したり、合意をとりつけたりする場合は、事前に根回しが必要である。
うちの職場の場合、ある一つのことを決めるまでに、じつに多くのプロセスがある。
根回し→第1会議→根回しのための根回し→根回し→第2会議→第3会議
重要な事柄になるとさらに、
(第3会議)→根回し→第4会議→第5会議
と、実に3~4か月かかる場合もある。
実現に至るまで、もうヘトヘトになるのだ。
ところで、この根回し文化というのは、他の国ではどうなのだろう、というのが気になる。
というのも、ここ最近、韓国主催のオンライン国際会合に招待されることがあるのだが、ここ数回の経験から、大きなイベントにもかかわらず、かなりの迷走ぶりを目の当たりにするにつけ、
(どうやら根回しをしないらしい)
ということがわかってきた。もちろん10年ほど前に、1年ほど韓国に留学していた際も、薄々気づいていたのだが、最近とみに、そのことを感じるのである。
いろいろ聞いてみると、どうやら根回しすることなくいろいろな計画を立てたりするために、それに関係する相手側が「聞いてないよ~」ということになり、その計画が延期になってしまうとか、とにかく、一筋縄ではいかないらしい。
根回しに慣れている人間からすると、
(なんで根回ししておかなかったんだろう)
と、つい思ってしまう。
ただ最近のニュースを見ると、この国も、根回しをしない文化が幅をきかせつつあるようだ。
たとえば、こんなニュース。
「政府は(4月)23日、4都府県への緊急事態宣言の発令に合わせ、鉄道会社に減便要請を行った。突然の運行ダイヤ変更を迫られた鉄道会社には困惑が広がっている。
鉄道ダイヤは、車両整備や運転士の人員配置など複雑な調整を行った上で決められている。特に、首都圏では複数の会社が路線を乗り入れる相互直通運転も多く、調整は煩雑だ。大手私鉄関係者は、「あまりに急な要請で、乗客に十分な周知ができない」と話す。
鉄道の車内はドアや窓の開閉などで十分換気されるため、これまでにクラスターの発生は確認されていない。都内の鉄道会社からは、「減便してもテレワークが進むわけではない。むしろ混雑が増して『密』を招き、逆効果にさえなりかねない」と憤りの声が上がる。
減便要請は内閣官房主導で、鉄道業界を所管する国土交通省との事前調整なしに進められた。
22日夜、政府による減便要請の方針が報道で伝わると、国交省幹部は、「連絡は何も来ていない。新型コロナウイルス感染症対策推進室(内閣官房)が頭越しに働きかけたようだ」と語った。」
これまでの常識だと、所管の官庁と事前調整をしないなんてことは、あり得ない。うちの職場だったら絶対に叱られる。いまの政府は「縦割り行政の打破」をめざしているのだろうか?
1日に1万人のワクチン接種ができる大規模なワクチン接種会場を都心のオフィス街に設置することを政府が計画したそうなのだが、1日に1万人ていどで「大規模」と言えるか?という批判はさて置きですよ、自衛隊の医療関係者がワクチン接種にあたると報道されていたのだが、どうやら自衛隊には事前調整をしておらず、自衛隊からは怒りの声が上がっているとか、いないとか。これもやはり「縦割り行政の打破」をめざしたことなのだろうか?
この国は、「根回し文化」から脱却しつつあるのだろうか?それがいいことなのか悪いことなのか、いまの僕にはわからない。
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