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ジャズマンはなぜ暗渠に惹かれるのか

8月28日(土)

僕の高校時代の2学年下の後輩に、ジロー君というジャズマンがいる。たまにFacebookをのぞいて、元気でやってるかなあと確認したりしている。

何年か前にいちど、ジロー君ご夫妻で僕の講演会を聴きに来てくれたことがある。僕のやっていることは、ご夫婦お二人の関心とはまるでかけ離れているので、さぞや退屈だったろうと思うのだが、彼にはそうした律儀なところがある。

昨年の秋もやはり、僕が関わった職場のイベントにわざわざ見に来てくれた。残念ながら僕はその日は子守りで出勤できなかったので、せめて招待券だけでもと、招待券2枚をお送りしたのだった。後日、彼は自身のTwitterで宣伝をしてくれた。

まあそんな感じで、いまはまったく別の道を歩んでいて、ましてやコロナ禍以降は、実際に会うような機会はないのだが、それでもFacebookで彼は近況を頻繁にあげてくれるので、会わなくとも様子がわかるのだ。

これはFacebookであげられていたからここに書いてもよいと思うのだが、先日は、痔瘻で入院したそうだ。「ジローが痔瘻」とは、なかなか洒落がきいているが、本人にとってはたいへんだったようで、痔瘻というのも僕が思っていた以上におおごとの病気なのだということを、彼のFacebookを通じて知ったのだった。

いまはすっかり回復したらしく、今日の午後から、彼の地元にあるカフェで演奏のライブ配信をすると、彼のFacebookでたまたま見かけた。YouTubeで配信するので、無料で見ることもできるのだが、できれば投げ銭もお願いしたいとのメッセージが書かれていた。

時間もあったので、そのライブ配信を見てみようと思い、他の用事も済ませながら、YouTubeで彼の演奏を見てみることにした。ジロー君がサックスとクラリネットで、あとはギターとウッドベースの3人編成である。

ライブ会場は、いつも彼が演奏している地元のカフェで、見たところ、それほど広くない。映像を見ると、常連さんらしい人が見切れていて、会場にも何人かお客さんがいるようだった。

少し遅れてライブ配信を見始めたのだが、僕を含めて7人が視聴中、とあった。

僕が驚いたのは、音楽じたいのクオリティーの高さもさることながら、映像やマイクの音質などのクオリティーの高さである。

昨年、コロナ禍でライブ演奏ができなくなったとき、ジロー君もご多分に漏れず、ライブ動画配信に挑戦することを余儀なくされた。最初の頃は、映像の解像度が粗かったり、音質がよくなかったりと、いろいろと苦心しながらライブ配信をしていたと記憶している。映像や音質のクオリティーの低さは、それだけで視聴者にとってストレスになったりする。

ところが今回、久しぶりに彼のライブ動画を見て、以前の時とはあまりに違うクオリティーの高さに、驚いたのである。おそらくこの1年半の間、いろいろと試行錯誤して、カメラやマイクの環境を整えていったのだろう。しかも、曲のタイトルを字幕で出すなどの工夫も凝らされていて、じつに心地よいライブだった。

それだけに、視聴者が7人というのは、なんとももったいなかった。僕はこれだけの配信環境を整えたことに敬意を表し、ささやかながら投げ銭をした。

ライブ演奏のほとんどは、ジロー君が作曲をしたオリジナル曲だった。その曲のタイトルの多くに「猫」が含まれていて、彼の猫好きの一面を彷彿とさせる。

僕が好きな曲は「暗渠と猫と月」である。聴いていると、夜、散歩をしているときに見つけた猫が暗渠の上を歩いていて、空には月が輝いている、という情景を思い浮かべることができる。

実はジロー君のもう一つの趣味は、「暗渠」なのである。彼のFacebookには、散歩をしている途中で見つけた暗渠の写真がよくあがっている。

僕の高校時代の後輩で、暗渠を見つけるのを趣味としている人間がもう一人いる。1学年下のアサカワ君で、彼もまた、ジャズマンである。散歩をして、暗渠を見つけると、それをFacebookにあげているのである。

在校中は、暗渠の話などしたことがないはずなのだが、たまたま二人は、暗渠という共通の趣味を持っているということが、最近になってわかったのである。

もしかするとこれは、ジャズマンに共通した趣味なんじゃないだろうか?タモさんもそうだったんじゃない?…あれは坂道か?

「ジャズマンはなぜ暗渠に惹かれるのか?」。これもまた、新書のタイトルになりそうである。

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