零下140度の対決
9月12日(日)
NHK-BSプレミアム、朝8時からの「ウルトラセブン 4Kリマスター版」。今日放送された第25話「零下140度の対決」は、いま読んでいる片山夏子『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』(朝日新聞出版、2020年)と、重ね合わせて考えてしまう部分が多い。
ポール星人による地球氷河期化計画。その手始めに、地球防衛軍の基地を凍りつかせる作戦を考える。地下にある動力室を破壊して、基地の全電源を喪失させる。すると基地全体が停電、当然、温度管理もままならなくなり、たちまち基地内は外気温と同じになる。ちなみに外気温は、最終的には零下140度にまで下がる。
急いで作業員は、地下の動力室の復旧を試みるが、これがなかなかうまくいかない。そのうち寒さで凍死したり倒れたりする人たちが続出する。
次々と倒れていく作業員に、見かねた医療班のアラキ隊員(幸田宗丸)が、ヤマオカ長官(藤田進)に進言する。
アラキ隊員「長官。300名の全隊員を基地から退避させてください」
ヤマオカ長官「退避?」
アラキ「そうです。基地内部の気温は零下90度。このままでは全員凍死してしまいます」
ヤマオカ「隊員の命が危険だというのか」
アラキ「はっ…、医者としてとても責任がもてません…。お願いします、すぐ退避命令を…」
ヤマオカ「基地を見捨てることは、地球を見捨てることと同じだ。我々は地球を守る義務がある。退却はできん!」
懸命に復旧作業が続いたが、次々に隊員たちが倒れ、医務室に運ばれていく。
たまりかねたアラキは、再度の意見具申のため、再び長官の下へ向かう。
アラキ「長官!もうガマンができません。長官、隊長。隊員が、どうなってもいいとおっしゃるんですか!全員ここで、討死にしろとおっしゃるんですか!」
キリヤマ隊長「アラキ隊員!君には、長官の気持ちがわからないのか?」
アラキ「わかりません!…わかりたくありません!使命よりも人命です。人間一人の命は地球よりも重いって、隊長はいつも私たち隊員に…」
キリヤマ「……」
ヤマオカ「キリヤマ隊長、アラキ隊員のいうとおりだ。地球防衛軍の隊員も一個の人間。人間の命は何より大切だ。…退却しよう」
退却をはじめようとしたとき、動力室に1人残ったフルハシ隊員の努力で、電源は奇跡的に回復する。
動力源が原子炉なのに、ドラマでは誰一人放射線のことを気にしていないとか、零下140度の寒さの中でコート一枚を羽織っただけで作業しているとか、いろいろとツッコミどころはあるのだが、そんなことはどうでもいい。問題は、そこで作業している人と、それを命じている人の心の葛藤の問題である。
このくだりは、「フクイチ」で必死に(いまも)復旧作業をしている作業員さんが直面している現実と、重なり合うところがある。
復旧作業をあきらめてしまうと、この国がたいへんな事態に陥ってしまう一方で、現場で作業している作業員さんたちは、自らの健康を犠牲にして作業にあたらなければならない、という矛盾。
宇宙人による謀略でなくとも、現実にいま、こうした問題が起きていることに、ぞっとする。そしてこの国のリーダーがそうした問題から目を背けていることにも、さらにぞっとする。
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