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ヘンテコ世界からの脱出

9月23日(木)

3歳の娘と、映画館に映画を見に行った。

僕にとって、映画館で映画を見るのはほんとうに久しぶりだし、娘にとっては、もちろん初めての体験である。

観に行った映画というのは、もちろん、

「おかあさんといっしょ ヘンテコ世界からの脱出!」

という、「おかいつ」の映画版最新作、通算3作目の作品である。

1作目、2作目は、テレビ放送時に見たのだが、劇場で観たのは初めてである。しかも一番前の席!

最近は、「ネタバレ」をしてはいけない風潮があるので、どこまで書いてよいかわからないのだが、まず結論としては、

たいへん素晴らしい!

のひと言である。

1作目、2作目とくらべると、格段に進化していて、完成度が高いのである。

1作目は、とりあえず映画版を作ってみました、という感じの作品で、ストーリーもやや平板だった。その難点を少しでも解消しようと、おそらく第1作の問題点を洗い出し、改良をしたのが第2作である。

今回の第3作は、過去の2作の作り方とはまったく違う。前2作が、やや「ぶつ切り感」があったのに対して、今回は、個々のエピソードがすべて有機的に結びついているのだ。ストーリーもたいへん深い。

もともと「おかいつ」の映画版は、映画館の中で、大声を出してスクリーンの中のキャラクターに呼びかけてもよいことになっていたのだが、コロナ禍で、声を出すことが禁じられてしまった。だが、それに代わる双方向のコミュニケーション手段をあれこれと考えられていることに、すっかり感心してしまった。

それと、今回は、4人のおねえさん、おにいさん(歌のおねえさん、歌のおにいさん、体操のおねえさん、体操のおにいさん)が、4人で一緒に行動をするという場面が少なく、4人それぞれに個々のエピソードが用意され、そのどれもが素晴らしい。ひとりずつの出演場面を大幅に増やしたのは、やはり感染防止対策の観点からの配慮なのだろうと思われたが、それが結果的に、よりストーリーに深みをもたらしたのである。

映画全体を貫いているのは、「歌のおねえさん(小野あつこ)」が、自分が歌のおねえさんであることの存在意義に悩み、自己否定に苦しみ続ける中、仲間の支えやたくさんの子どもたちの応援によって自分を取り戻していく、という再生の物語で、これは歌のおねえさんの年度末の「卒業」を暗示しているのか、それとも「存続」を暗示しているのか、なんとも思わせぶりな展開だった。

こうした物語の核となる部分以外にも、その周辺のエピソードにも注目すべきところが多かった。

体操のおねえさんこと「あづきおねえさん」のエピソードは、一見して物語の本筋とは関わらない、地味なエピソードなのだが、僕は、この場面に登場する小池徹平の達者な演技も含めて、個人的にはこのエピソードがいちばんグッときたのだった。詳細な内容は書かないが、「選択肢を勝手に絞ることに騙されないことの大切さ」を気づかせてくれるエピソードである。

総裁候補を勝手に4人に絞り、この中からだと誰がいちばんいいかなあ、と、いつの間にかそう思わされてしまっているいまこそ、観る映画である!「犬と猫と、どっちが好き?」と問われて、「ウサギ!だってほんとうにウサギが好きなんだもん!」という気持ちをストレートに出すことのできる社会こそが、生きやすい社会ではないだろうか。

僕はこの映画を観て、1時間泣きっぱなしだった。3歳の娘にも伝わっているといいんだがなあ。

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