地味な回ほど記憶に残る
9月5日(日)
日曜日の朝、たまに早起きをすると、朝8時からNHK-BSプレミアムで放送中の『ウルトラセブン4Kリマスター版』を観ることにしている。
この日、たまたま放送されていたのは、「第24話 北へ還れ!」というエピソードだった。
フルハシ隊員(石井伊吉、現・毒蝮三太夫)が主役の回である。詳しい内容は省くが、ウルトラホーク3号に乗ったフルハシが、民間機との衝突を避けるために、自爆することを覚悟した。自爆スイッチを押し、カウントダウンがはじまったときに、キリヤマ隊長のはからいで、フルハシとその母が、無線を通じて会話をする場面が印象的である。
母は、息子が人生の最後の瞬間になるかもしれない状況に陥っていることを知らずに、パトロールはどうだい?と聞き、それに対してフルハシが、何事もなかったかのように「なに、どうってことないさ」と言って、2人は笑い合う。
僕はこの場面がとても印象に残っていたのだが、それ以外の場面はほとんど覚えていなかった。
いまになって観てみると、カナン星人という宇宙人は出てくるのだが、ウルトラセブンと怪獣が戦う場面はなく、強いて言えば、カプセル怪獣のウィンダムが脳波に異常を起こしてウルトラセブンに刃向かう、という謎の行動が、けっこう長い時間続く。カナン星人の目的もよくわからないまま、最後にはあっけなくやられてしまう。
予算がなかったので怪獣を登場させなかったとはよく聞く話である。脚本は市川森一で、当時若手脚本家だった市川の回は、しわ寄せを食って予算を減らされ、怪獣と戦うような派手な演出ができなかったのだ、と聞いたこともある。
それよりも僕が気になったのは、フルハシ親子の場面があれほど感動的なのに、それ以外の場面がいたって意味不明だということである。
思うに、市川森一が描きたかったのは、フルハシ親子の無線を通じての会話、という1点だったのではないだろうか。しかしそれでは30分のドラマにはなり得ない。そこで、あの手この手を使ってなんとか時間を持たせようとしたために、謎の展開になったのではないだろうか。
無線を通じた会話の最後に、フルハシ親子が「ハハハ」と笑い合う。母親にしてみたら、息子が立派に仕事をしていることへの安堵の笑いであり、息子にしてみたら、母親に心配をかけまいとする空元気の笑い、という、これもまた切ないシーンなのだが、この笑っている時間が不自然に長いのだ。これもまた、「尺をかせぐ」ためなのではないか、と勘ぐってしまう。
しかし、そうした数々の問題を差し置いても、フルハシ親子の無線を通じての会話は、ずっと僕の記憶に残り続けたのである。
もう一つ、僕の中で好きな回は、「盗まれたウルトラ・アイ」。これも脚本は市川森一で、やはり予算の関係でウルトラセブンが怪獣と戦う場面はないのだが、物語は普遍性を持っている。
いま観ると、アフガニスタンに取り残された人たちの想いとも重なってくる。
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コメント
ちょうどウルトラQとウルトラセブンの4Kリマスター版が放送中ですね。
Qはもう終わりますけど・・・。
録画して時間空いた時にまとめて見てます。
白黒もカラーも4Kリマスターの画質の良さに驚きと妙な違和感を感じますが・・・。
さて市川森一回ですが、担当回を調べてみると、予算の関係もあるのかウルトラ警備隊の特定の人物に焦点を当てた物語が多い気がします。
第11話「V3から来た男」はキリヤマとクラタ。
第29話「ひとりぼっちの地球人」はソガ。
第37話「盗まれたウルトラアイ」はダン。
等々というような感じで全5話。
なぜか怪獣と戦っている印象ないし、「盗まれたウルトラアイ」以外ほぼストーリー覚えていない・・・。
人物焦点の回は一周回ってこじれてる私は好きなんですけど、市川森一脚本回は特に記憶に残っていないのがなぜなのか・・・。
投稿: 江戸川 | 2021年9月 8日 (水) 21時28分