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笑いの系譜

疲れているので、どうでもいい話を。

ドリフターズのコントに、「階段落ち」という傑作がある。

志村けん扮する映画監督が、映画のワンシーンとして、池田屋の階段落ちの場面を撮影するのだが、そこに田舎芝居上がりの役者(加藤茶)が、代理のスタントマンと称してやってくる。そのスタントマンは、主役に斬られて階段から落ちるだけのエキストラなのだが、初めての映画出演のせいか、ひどく張り切っていて、何とか目立とうと思って、顔を白く塗りたくったり、大仰な芝居をしたりする。

たんなるエキストラが、大仰な芝居をして、主役以上に目立とうとするから、監督はそのたびにそれをたしなめることになる。しかしこれまでの芝居のクセはぬけず、どうしても歌舞伎のような大げさなものになってしまう。

…と言葉で説明しても、なかなかその面白さを伝えることができないのだが、この10分ほど続くドタバタコントは、加藤茶のボケが遺憾なく発揮されて、終始笑いっぱなしである。

僕はこのコントが大好きなのだが、加東大介原作の映画『南の島に雪が降る』(1961年、東宝)を見ていると、この設定を彷彿とさせる場面が出てくる。

加東大介の『南の島に雪が降る』(ちくま文庫)の内容については、以前に書いたことがあるので、そちらを参照のこと。

で、それが原作となって1961年に東宝で映画化された。

この映画に出演している役者がすごい。

主演はもちろん、原作を書いた加東大介だが、その脇を、伴淳三郎、三木のり平、有島一郎、柳家小金治、西村晃、渥美清、フランキー堺、小林桂樹、そして森繁久弥といった、当代きっての喜劇役者が勢揃いして固めているのである。渥美清なんか、まだあんまり売れていない頃だったから、下っ端の役である。

伴淳三郎は、いわゆるドサ回りの芝居をしていた田舎役者で、歌舞伎のまねごとをした大仰な演技をする、いわゆる大根役者である。

最初のうちは、どうしてもその大仰な演技のクセがぬけず、何でもないシーンでも、どうしても歌舞伎の見得を切るような、大げさに演じてしまう。

そのたびに、加東大介は、「おまえの演技にはリアリティーがないんだよ!」とたしなめるのだが、伴淳は「リアリティーって、なんです?」と、その意味がわからず、相変わらず大げさな芝居を続ける。映画を見ているものからすれば、それが可笑しくってたまらないのである。

この場面を見て、加藤茶は、ひょっとしたら伴淳さんの演技の影響を受けているのではないだろうか、という気がした。「階段落ち」というコントには、伴淳さんのとぼけた演技を彷彿とさせるものがあるのだ。

すでに言い古されているかもしれないが、笑いには系譜があるのだということを実感する。その系譜をたどることもまた楽し。

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