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雪中行軍

12月13日(月)

朝起きると、雪が降っているのがホテルの窓から見えた。そういえば、今日は北日本を中心に荒れ模様になると、ニュースで言っていた。

ホテルから在来線で2駅乗った場所が、今回の用務先である。駅を降りると、雪がかなりの本降りである。

「建物までは駅から歩いて10分ていどですので、歩いておいでいただけますが、もし必要ならば、駅までお迎えにまいります」

と、事前のメールをいただいていた。どうしようかなあと考えたあげく、「荷物が重いと思うので、可能であれば迎えに来て下さい」とあらかじめ連絡しておいてよかった。仮に「歩いてうかがいます」などとうっかり答えたら、大雪の中を重い荷物を持って歩かなければならなかっただろう。

今回は、二人の方と再会した。

一人は、私より年上のAさん。僕は記憶になかったのだが、「前の前の職場」にいたとき、本務でAさんの職場に訪れたことがあり、そのときに挨拶を交わしたという。ということは、20年近くまえのことだな。

もう一人は、私より年下のBさん。僕が「前の前の職場」に赴任する前に、あるところで1年ほど一緒に学んだ方である。1998年くらいだったろうか。やはり20年以上前のことだ。

つまり僕は、ほぼ20年ぶりに再会したお二人と、一緒に仕事をすることになったのである。

以前にお会いした人と、さまざまな縁があって20年ぶりに再会して一緒にお仕事をする、というのは、人生、まったく無駄がない。大林宣彦監督は、映画づくりの場で俳優と再会することを無上の喜びとしていたが、それに近い感慨がある。

Bさんは、20数年前の雰囲気を、そのままとどめていた。

「現場にご案内します」と、昼食後にBさんが言った。

(現場って、大雪じゃんかよ…)

と、内心思ったが、むしろ大雪の現場がどんな感じなのかを、見てみたかった。

お昼過ぎになると、雪があっという間に積もり、あたりは一面、白銀の世界である。

右を向いても左を向いても真っ白な世界のなかを、Bさんについて歩いて行くのだが、マスクをしながら歩いているせいで、眼鏡が曇って前が見えない。前をどんどん進んでいくBさんの姿がぼんやりと見える程度である。

(こりゃあ、勘で歩くしかないな…)

積雪を踏みしめながら、歩いていると、

ズボッ!!

と、落とし穴みたいなところにハマってしまった。

(なんじゃこりゃ!)

足下を見ると、どうやら小さな溝にハマってしまったらしい。

(アブねえ)

慎重に歩くことにする。

前を歩いていたBさんがようやく立ち止まった。

「ここです」

(ここ…って、真っ白で何も見えない…)

Bさんは、あそこがああで、こちらがこうで、と熱心に説明してくれているのだが、真っ白で何も見えないし、なにより雪がガンガン降っているので、そっちの方が気になっちゃって、内容が頭に入ってこないのだ。

それでも愚直に説明するBさんは、20年以上前の姿そのものだった。

現場検証は30分ほどで終わり、雪の中を歩いて、溝に注意しつつ、建物に戻った。

わずか1日の滞在だったが、AさんやBさんの丁寧なアテンドや、さまざまな意見交換のおかげで、とても充実した1日になった。

「またうかがいます」

「今度は雪のないときにどうぞ」

来月も行くつもりでいるが、また大雪になるかもしれない。

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