贋作・アベノマスク論
12月3日(金)
午前10時から午後5時過ぎまで、職場で途切れなく打合せが続く。その後も、メールの返事やら校正やらをしていたら、帰宅がすっかり遅くなってしまった。
TBSラジオ「アシタノカレッジ 金曜日」をアフタートークまで聴いた後に、誰にも読んでもらえないブログを書くことが、週の終わりのストレス解消法である。
それを自分でよしとしているのだが、その一方で、これだけ長々と書いても誰にも読まれないということに対して、凹まないといえば嘘になる。自分には文才がないのか、華がないのか、あるいはそのどちらともなのか。注目に値しない文章ばかり書いているのだろう。
「世の中でいちばんいい言葉は『重版』って言葉ですよね」
と、「アシタノカレッジ金曜日」のアフタートークの冒頭で、武田砂鉄氏がつぶやいた。
たしかにそうだ。重版。いい言葉だ。
最近僕は、二つの新書に関わった。関わった、といっても、原稿を書いたのはほんの少しだけで、そのうちの1冊(赤い表紙のほう)は、無記名である。どこからどこまでを僕が書いたのかは、読者にはわからない。もう1冊(黄色い表紙のほう)は、記名だが、頼まれてほんの数ページ書いただけである。
この二つの新書が、いずれも発売と同時に、重版がかかったのである。無記名で書いた方(赤い表紙のほう)は、発売前から話題になっていたので宜なるかなと思うのだが、もう1冊の方(黄色い表紙のほう)まで、発売直後に重版になるとは思わなかった。サブタイトルに「眠れなくなるほど面白い」みたいなフレーズが使われているので、おいおい、大きく出たな、と恥ずかしかったのだが、重版がかかったということは、タイトル負けしなかった、ということである。
しかも、僕が無記名で書いた方(赤い表紙のほう)の出版社の新書(赤い表紙の新書)の売れ行きランキングを調べてみたら、1位が僕が無記名で書いた本で、2位が町山智浩さんの書いた本なのだ。おいおい、町山さんに勝っちゃったよ!
ちなみに2冊とも、僕のところには原稿料や印税が入らないので、実のところ、「重版」と聞いても、さほど嬉しくはないのだ。
それに引き換え、である。
僕が単独で書いた本はすべて、重版になったことはない。このブログと同じく、まったく注目されないのだ。死んでから注目されるのだろうか、と一縷の望みをつないでいるのだが、そもそも生きている間に注目されなかった人間なのだから、死んでからも注目されることはないだろう。
いくつかの出版社から、お話はいただいているのだが、そんなわけで、単行本を書く意欲がすっかり削がれてしまっている。どうせ何を書いても売れないんだろう、と。
以前にも書いたかと思うが、あるとき、僕が書いた本の在庫が場所をとって倉庫代がかかるので400冊を廃棄処分します、という連絡があった。世の中でいちばんイヤな言葉は、「在庫本の廃棄処分」である。
僕がどうして、こんな愚痴を延々と書いているかというと、最近のニュースで、久しぶりに「アベノマスク」が脚光を浴びているからである。
ニュースによると、新型コロナウイルス対策で政府が調達した「アベノマスク」を含む8000万枚余の布マスクが使われずに大量に備蓄されている、ということで、厚生労働省が新聞などの取材に応じてマスクが保管されている倉庫を公開したところ、約5200平方メートルの区画内に、マスクの入った約10万箱の段ボールが、最高で約5メートルの高さに積み上げられていたという。そしてその経費は、6億円だというのだ。
これから先も使うあてのない布製の「アベノマスク」の在庫8000万枚が、6億円をかけて、倉庫で保管されるというのは、どう考えても納得できない。
だってそうでしょう?こちとら、苦労して書いた本の在庫を倉庫に保管すると経費がかかるので、400冊を処分しますと言われているんだぜ。6億円かけて保管する8000万枚の「使えないマスク」と、たった400冊すら倉庫に置いておくのが無駄だとして処分された俺の本。どちらが価値があるのか?ってハナシですよ。
僕はすっかり、文章を書く自信をなくしてしまった。どうやったらいい文章が書けるのだろう。
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山城同性婚訴訟で違憲判決
同性同士の結婚が認められないのは憲法で保障された婚姻の自由や平等権に反するとして、山城市の同性カップルが2019年に国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、山城地裁(日下部英梨裁判長)は4日、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると認定した。原告の請求は棄却した。
今回の裁判は中入り後まで開廷せず、原告と弁護団の物語がずっと進行する異例の展開で、後半戦も国家賠償請求訴訟をどう演出するかの工夫がうかがえた。
コロナ禍で行われた2年目の裁判であったが、最後のカーテンコールは今年も勝訴したものの、恒例の判決文配布は今回なかった。しかし鬼瓦さんから委ねられた要望はしっかりアンケートに書いて提訴したので、今後の勝訴・敗訴に注目したい(山城支局・こぶぎ記者)。
投稿: 🐢📷🖊 | 2021年12月 4日 (土) 21時39分