朝ドラ撤退宣言、撤回!
以前、「朝ドラ撤退宣言」をしたが、撤回することにする。
「戦後編」になって、出演陣がガラッと変わり、深津絵里、オダギリジョー、村田雄浩、濱田マリなどが登場することでほんわかした雰囲気になり、安心して観ていられるようになった。やはり「戦後」になって、時代が明るくなったことも関係するのだろう。
何より、1960年代のジャズ音楽が、物語の大きな軸になっていることである。
このドラマの「戦時下編」ではしばしば、渡辺貞夫さんが演奏するサックスの音色がBGMで使われていたが、「戦後編」では、実際に渡辺貞夫さんが、ドラマに登場する。といっても、本人が登場するのではなく、ナベサダさんのレコードがレコード店のシーンで登場したり、当時のジャズメンがセリフの中でナベサダさんに言及しているという形で、である。
主人公の「るい」(深津絵里)が、あるレコード店に入るシーンでは、その店の一推しのジャズレコードとして、渡辺貞夫さんのアルバムが店頭に飾られている。そのレコードの脇には、書店でいうところのPOPが貼ってあり、店長の推薦コメントが書かれている。1960年代当時、新譜に対して書店のPOPのような手書きの宣伝文が存在したのかどうか、実際のところはよくわからない。
また同じレコード店には、「新譜紹介 野口洋三」という貼り紙があるが、これは当時のジャズ評論家の「野口久光」と「岩波洋三」を合わせた名前ではないだろうか。なんとも細かい芸である。
また、ジャズのライブハウスに出入りしているトミー(早乙女太一)というトランペット奏者の、
「俺よりも先に渡辺貞夫が渡米するなんて…。秋吉敏子に続いて渡米するジャズミュージシャンはこの俺だ、と決めていたのに…」
というセリフがあるが、渡辺貞夫が秋吉敏子に続いて渡米したというのは事実である。こうした「小ネタ」は、この時代のジャズにノスタルジーを感じる人にはたまらない内容なのではないだろうか。もちろん、より詳しい人には、ツッコミどころもあるのかもしれないが…。
というわけで、「朝ドラ撤退宣言」を撤回することにしたのである。
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