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片手袋からはじまるストーリー

1月14日(金)

今日のTBSラジオ「アシタノカレッジ金曜日」のゲストは、片手袋研究家の石井公三さんだった。

道ばたに落ちている片方だけの手袋=片手袋から、いろいろな思索をめぐらせるという。

そういえば、僕はこの1週間ほどのあいだで、2回ほど、片手袋に遭遇した。

1度目は、1月8日(土)、繁華街のバス停から、バスに乗り込んだときのことである。

大方の客がバスに乗り込み、いよいよ出発かな、と思っていたら、乗車口である前方の扉から、おばさんが息せき切ってバスに乗り込んできた。

「あの、…手袋を落とされましたよ!」

そのおばさんは、バスに乗り込んだかと思うと、優先席に座りかけていたおばあさんに、その片手袋を差し出した。そのおばあさんがバスに乗る前に手袋を落とした瞬間を、たまたま通りかかったおばさんが目撃して、落ちている手袋をすぐに拾って、バスが出発する前に手渡そうとしたのだろういうことが、その一連の様子からうかがえた。

たしかに、優先席に座りかけていたおばあさんは手袋をはめていたが、左手のみで、右手にははめていない。

「あ、…ご親切にどうもありがとうご…、あ、いや…」

と口ごもったかと思うと、

「これ、私のじゃありません」

とまさかの答え。

手袋を渡そうとしたおばさんは、ビックリした様子で、

「違うんですか?」

と念を押すと、

「違います」

と、やはり否定する。

よく見てみると、おばさんの拾った手袋と、優先席に座ろうとしたおばあさんの手袋は、色が微妙に異なる。つまりまったく違う手袋なのだ。

手袋を拾ったおばさんは、首をかしげながら、バスを降りて、どこかへ歩いて行ってしまった。

いくつもの疑問が残る。

おばさんは、道ばたに長い時間落ちていた片手袋ではなく、「落としたてほやほや」の片手袋を拾ったのである。だから、バスの乗客のものと思い込んだのだ。

で、いままさにバスに乗り込もうとしたおばあさんは、手袋を片手しかはめていないことを確認し、そのおばあさんを追いかけてバスに乗り込んだ。

どう考えても、その「落としたてほやほや」の手袋は、そのおばあさんのものとしか考えられないのだが、実は違う手袋だったのだ。これはいったいどういうことなのか?

同じバスに乗っている人で、「それ、私のです!」と言う人もいなかった。

おばさんは仕方なくバスを降りてどこかへ行ってしまったのだが、拾った片手袋はどうしたのだろう?

そもそも、片手袋を拾ったら、どこに届ければいいのだろう?バスの運転手さんに預けるわけにも行かないし、もともと落ちていた場所に戻すのだろうか?人の片手袋を持って帰るわけにも行かないし、どうにも扱いに困る。

それに、最大の疑問は、そもそもバスに乗り込んだそのおばあさんが、なぜ左手にしか手袋をはめていなかったのだろうか?そのことが、この問題をややこしくさせていたのだ。

僕はざわついた気持ちのまま、家路についたのであった。

2度目は昨日、自宅の最寄りのバス停でバスを待っていたときのことである。

列の先頭に並んでいたのだが、ふと道ばたを見ると、片手袋が落ちている。

ちょうどバスの乗車口のあたりに落ちていたので、バスに乗ろうとしたときにICカードを取り出すタイミングかなんかで、片方の手袋を脱いで、そのまま落としてしまった、といった一連の過程が想像された。

しかも、いかにも「落としたてほやほや」の片手袋である。そればかりか、その片手袋自体、どうやらまだ使い始めたばかりの新品のようなのである。

片手袋を観察すると、かなり複雑な構造を呈している。指の先の部分が出るような仕組みになっていて、さらにそれを覆うようなカバーがついている。つまりふだんは、4本の指と親指とが二股に分かれている手袋として使えて、手袋をしたままスマホをいじる場合には、その4本の指のところのカバーをはずして、指を出す、という、すぐれものの手袋なのである(わかりにくいかな?)。しかも毛糸で作られていて、かなり可愛い。

その手袋の様子から、若い女性がはめていた手袋であろうことは容易に想像できた。おそらく1本前のバスに乗ろうとした若い女性客が、うっかり落としてしまったのだろう。

サア困った。

僕はそれを見つけてしまったのだが、これをどうしたらよいのか?

たかが手袋、と思うかもしれないが、その人にとっては大事な手袋かもしれない。なにしろ新品同様で、しかもかなり凝った作りの手袋なのである。そうとうなお気に入りの手袋であったことに違いない。

いや待てよ。自分で買ったとどうして決めてかかるんだ?大切な人からプレゼントでもらった手袋かもしれないじゃないか。だとしたら、落としたことがよけいに悔やまれるはずだ。今ごろ1本前のバスの中で、泣いているに違いない。

結局、拾って届けようにもどこに届けたらよいのか、という疑問にぶち当たり、何もできず、僕はバスに乗り込んだのだった。

バスに乗っている間、僕はずーっと、その片手袋の持ち主のことを想像し、なぜ自分は何もできなかったのかと悔やむばかりだった。

そして帰路、同じ路線バスに乗って自宅近くの停留所で降りたとき、片手袋が落ちていたところに行って見てみたが、当然ながら、すでに片手袋はなかった。

誰か親切な人が拾って、何か手立てを講じてくれたのだろうかと、僕はそう願うばかりだった。

…ことほどさように、道ばたに落ちている片手袋は、人の気持ちをざわつかせる。僕だけではなく、もちろん片手袋研究家だけではなく、誰もが、道ばたに落ちている片手袋にまつわるエピソードを持っているのではないだろうか。

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コメント

こぶぎ的共通テスト速報

情報処理基礎 第2問
https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/kyotsu/mondai/mondai/1337384_4948

投稿: さいわいさ🐢 | 2022年1月16日 (日) 21時12分

(誤)情報処理基礎
(正)情報関係基礎

投稿: 違いがち🐢 | 2022年1月16日 (日) 23時08分

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