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ラジオ遺産を受け継ぐ

以前にも書いたが、近石真介の「はがきでこんにちは」は、5分ていどのラジオ番組だが、49年間にわたって放送されていた長寿番組である。もともとTBSラジオの午前中に放送していたワイド番組「こんちワ近石真介です」の1コーナーとして放送されていたが、同番組終了後も、日本香堂の提供でこのコーナーだけは生き残り、地方のラジオ局などでほそぼそと放送されていた。制作はTBSラジオだが、TBSラジオでは放送されなかった。

番組に寄せられてくる他愛もないお葉書に、近石真介がコメントをするという、たいへんシンプルな番組で、僕はこれこそが、ラジオ番組の究極の形ではないだろうか、と思い、勝手に「ラジオ遺産」に認定した。

その後、近石真介氏が高齢で体調を崩され、49年間続いた番組も、2020年9月をもって終了したという。その後継番組として、六代目三遊亭円楽による「おたよりください!」が始まったが、後継者として円楽師匠が選ばれたのは、この番組の提供が日本香堂であることによるのだろう。

ところが、円楽師匠は2022年1月末に、脳梗塞で入院した。レギュラー番組の「笑点」も当然お休みしているわけだが、ラジオのレギュラー番組であるところの「おたよりください!」は、どうなっているのだろう。

…と思ったら、なんと、六代目円楽の弟子だった伊集院光氏が代理で出演しているではないか!

伊集院光氏といえば、ラジオの帝王ですよ!もちろん師匠が倒れたことによる代理なので、一にも二にも引き受けなければならなかったのだろうが、それにしても、キー局の生放送のワイド番組とは真逆の、ほとんど聴かれていない5分番組であるばかりでなく、当たり障りのない内容のおはがきに対して、伊集院氏はどのように受け答えをするか、興味津々である。

動画サイトにあがっている音源を聴くと、それまでの近石真介さんや円楽師匠が作り上げてきた世界観を壊すことなく、この「ラジオ遺産」を受け継いでいることに、安堵した。もちろん、49年間続けて来た近石真介さんの、他愛もない内容のはがきに対する空気のようなコメント、という境地には至っていないが、これが続けば、次第にその境地に至るのではないか、と思わせる。

それより何より、僕は以前、TBSラジオの午前のワイド番組の系譜を、近石真介→大沢悠里→伊集院光と位置づけたことがある。伊集院光氏は、円楽師匠の弟子でもあるが、近石真介さんの後継者でもあるのだ。

だから、伊集院光氏が、日本香堂提供の5分番組「おたよりください!」のはがき読みをしていることに、深い感慨を禁じ得ないのである。そしてこの3月でTBSラジオの朝のワイド番組を辞めるタイミングで、代理とはいえこの番組を引き受けたことも、天の配剤というべきであろう。

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