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コレナンデ商会

4月8日(金)

いろいろあったが、今週も無事、「アシタノカレッジ金曜日」のアフタートークまでたどり着いた。

とくに書くことが思い浮かばない。

この4月は例年よりも、自分が気に入っていた番組(テレビ・ラジオ)が次々と終わってしまうとか、番組を「卒業」する人がいる、といったことが、とりわけ多いような気がしている。

NHKのEテレ「コレナンデ商会」が終了してしまったのも、その一つである。

毎日欠かさず観ていた、というわけではないけれど、非常にウェルメイドな番組だあと思って、楽しみに観ていたのに、どうして終わってしまったのだろう。

なんと言っても、放送作家の下山啓さんの構成と、塩谷哲さんの音楽がよかった。

塩谷哲さんは、僕の高校の2つ上の先輩で、同じ部活だったが、当時から伝説的な人だったので、まったくお話ししたことはない。ただ、僕が高1のときの定期演奏会で、当時高3だった塩谷哲さんが、ドラムを叩いていて、つまり一度だけ、僕は塩谷さんと同じ舞台に立ったことがあるのだが、僕のアルトサックスのソロがあまりにお粗末な出来だったので、苦笑されたことは覚えている。

塩谷さんは、たまに音楽室に来ると、ピアノを即興で演奏していた。「たんたんたぬきの♪」で始まる曲が、いつの間にかリチャード・クレイダーマンの「渚のアデリーヌ」のメロディーに変わっていたり、とかいった、ギャグ演奏みたいなことをして、後輩たちを驚かせていた。

「コレナンデ商会」の音楽も、いかにも塩谷さんらしい音楽だなあと思って、楽しみに聴いていた。

下山啓さんのほうは、実はよく知らなかったのだが、ある友人から「『カリキュラマシーン』の放送作家だった人ですよ」と聞いて驚いた。僕が子どものころに観ていた「カリキュラマシーン」の作家が、いまも現役で子ども向けの番組の構成作家をしていたのである。

調べてみたら、TBSテレビで放送されていた、ドリフターズが声優をつとめる人形劇「飛べ!孫悟空」の構成もしていたんだね。そう言われてみたら、「コレナンデ商会」に登場する人形たちのルーツは、「飛べ!孫悟空」にあるような気がする。それに主題歌の作詞もしていたんだね。

だから番組の中で流れる「下山啓作詞・塩谷哲作曲」の歌は、僕にとって最強の組み合わせなのだ。

川平慈英のエンターテイナーぶりも、とてもおしゃれだった。

こんな良質な子ども番組が、なぜ終わってしまったのか、腑に落ちない。

後継の新番組を、ちゃんと観ていないのだが、関西を拠点とする大手お笑い事務所の芸人が司会をする番組になってしまった。

番組を観ていないので、おもしろいのかどうかはわからないが、こうやってどんどん、子ども番組にもこのお笑い事務所の芸人が入り込んでいくのかと思うと、正直言って、ゲンナリしてしまう。

むかしはそうでもなかったのに、この事務所の芸人がなぜ苦手になったのだろう。

「アシタノカレッジ金曜日」で、武田砂鉄氏がたしかこんなことを言っていた。

「テレビで芸人さんたちが、同じ事務所の芸人同士の内輪話みたいなものを喋っているのを観ると、なんで俺がそんなことを知らなくっちゃならないんだ?という気になる」

ナンシー関のコラムをまとめた文庫の解説にも、「最近のテレビは業界内事情をちらつかせることが多い」といったことを書いていた。

僕がその大手事務所の芸人に対して抱いていた違和感は、それなのだなと得心がいったのである。

そういえば、ある配信番組で、ラランドという芸人(僕は実はネタを見たことがないのだけれど)が、

「関西を拠点とする大手お笑い事務所の芸人さんたちは、初対面のときに、しきりに『誰と同期?』と聞いてくるんですよ。ほかの事務所の芸人さんにはあまり聞かれないんですけどね」

というようなことを言っていた。つまり、上下関係とか派閥を意識し、同時にそれを視聴者や聴取者にも共有させようとする構造の中に置かれているのである。個々には好感が持てる芸人が数多くいても、その構造の中に彼らがいるということに気づかされたときに、僕はある幻滅を感じてしまうことを、告白しなければならない。

…て、俺はいったい何の話をしているのだ?つまり言いたいのは、「コレナンデ商会」は、そういったものとは対極にある番組だった、ということである。

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