引きは強いが、謎は残る
4月6日(水)
朝早くに家を出て、新幹線で西に向かう。今回は、久しぶりに予定を詰め込んだ出張なので、自分の体調が心配である。実際、体調はいまひとつである。
着いたのは、千年の都といわれる町である。
そこから地下鉄に乗り、目的の駅で降りる。
この駅は、これまで何度となく降りた駅である。東西に走る三条通はよく歩いた。とくに通り沿いにある喫茶店は、この町を訪れるたびに利用していた。円卓状のカウンターの中で、店員さんがせわしなくコーヒーを淹れている様子は見ていても飽きなかった。
まだ約束の時間まで少しある、と思って、その喫茶店の前まで行くと、残念ながら改装工事中で、1年後に再開予定とのことだった。
しばらく界隈をうろうろしたあと、時間になったので、最初の用務先である施設に入る。
今回の打合せ、というか交渉ごとに関して、二人の方が対応してくれたが、一人は以前からの知り合い。もう一人は、初対面である。初対面の人はまだ若い。
名刺を交換すると、おもむろにこんなことを言った。
「僕の妻が、鬼瓦先生の『前の職場』の卒業生で、鬼瓦先生のことをよく知っていました」
「え!そうですか。直接教えた学生でしょうか」
「いえ、ゼミは違うのですけれど、友だちや先輩の中には、鬼瓦先生のゼミ生もいたそうです」
まったく、狭い世界である。
というか、ここでもまた、引きの強さを発揮したぞ!
しかし、不思議である。前の職場と、この場所とでは、かなり距離が離れている。
「ちなみに、ご出身はどちらですか?」
と聞くと、その方ご自身は中部地方で、その人の妻、つまり僕の「前の職場」の卒業生は、東北地方の中核都市であるという。
ますます謎である。
そもそも二人は、どうやって知り合ったのだろう。大学での専門分野も、まったく異なっている。出身大学も違うようだ。
それに、遠く離れたこの町に、どのような経緯でたどり着いたのだろう。
野次馬根性の塊である僕は、その人の人生について小一時間インタビューしたい、という衝動に駆られたが、そもそも打合せの時間が限られているし、初対面の人に突っ込んで聞く話でもないので、グッとこらえた。
打合せをしているうちに、予定していた1時間半があっという間にすぎた。
引きの強さのおかげか、非常に好意的に対応していただき、この施設をあとにした。
次に向かったところは、まったくの初対面の場所である。
僕はそもそも、人と話すのが苦手で、初対面の人ならばなおさらである。つまりはこの仕事にむいていないということなのだが、しかしそれで「お足をいただいている」(by小沢昭一)ので、仕方がない。
こちらもまた対応してくれたお二人が好意的な方だったので、うまく話が進んだ。
ひとまず初日の用務は無事に終了したのだが、今回対応していただいた4人の方は、いずれも私よりはるかに若いことに、いささかのショックを受けた。広い意味で同業者なのだが、この業界で僕は何も成し遂げていないまま無駄に年を重ねてしまったことを恥じながら、次の用務先である隣県に向かった。
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