宇宙とトンネル
4月3日(日)
3月31日をもって忙しい役回りから離れ、ようやく2年間のオツトメを終了した。そのせいか、一気に力が抜け、この土日はほとんど何もせずに過ごした。仕事は山積みなのだが。
それに、長らく重荷になっていた3月末締め切り厳守の原稿、というか草稿を、4月1日に送信した。もっとも、これから刊行まで、1年ほどかけて、他の執筆者との内容や文体の調整を行うことになっている。
さっそく先方から受け取りの返信が来たのだが、「3月末をもって、担当のひとりである○○が退職することになりました。私ひとりになってしまいましたが、引き続きよろしくお願いいたします」とあり、若干、不安を覚える。
お辞めになる人はまだ、定年ではないと思われるのだが、何かの事情でお辞めになったのだろうか。その詮索はともかくとしても、数年計画のこのプロジェクトも、1枚1枚葉が落ちるように、担当者が減っていって、このプロジェクトは上手くいくのだろうか、と心配になった。そもそも、このプロジェクトチームは、全員男性で、しかも平均年齢がかなり高い。注意力や忍耐が必要となる作業がこれから予想されるのに、そうした作業にふさわしい人材を補充することはできるのだろうか。予算が削減されている現状では、望むべくもないのかもしれない。まあ、現状でなんとかするしかないのだろう。
土日は何もする気が起こらなかったので、撮りだめていた映画を観ることにする。
アメリカ映画『ドリーム』(2016年)を観た。1961年のNASAを舞台に、アメリカ初の有人宇宙飛行計画を成功させるために活躍した黒人女性の物語である。白人ばかりの職場で、不当な待遇を受けていた黒人女性の計算手たちが、自らの才能と技術をもって差別や偏見に立ち向かっていく。…と書くと、主張の強い映画のように思われるかもしれないが、主人公の3人が愛すべきキャラクターなので、観ていて楽しいし、ラストに至る展開はじつに小気味よい。
実話をモデルにした映画で、登場人物も実名である。映画のエンドクレジットでは、主人公3人の本人の写真が映される。同じ年に公開されたクリント・イーストウッド監督のアメリカ映画「ハドソン川の奇跡」も、実話をもとにした映画で、エンドクレジットに当事者たちの映像が流れていたと記憶しているから、こうした手法は流行なのだろう。
規模はまったく異なるが、僕が2日前に原稿を出した、数年計画のプロジェクトと、つい重ね合わせて観てしまう。類い希な技術をもつ救世主はあらわれるだろうか。
もうひとつ、映画『黒部の太陽』(1968年公開)を観た。『ドリーム』がアメリカの国家事業に関する映画だとすれば、こちらは、この国の国家事業に関する映画である。そういう意味では共通点をもつのだが、『ドリーム』のような明るさや小気味よさはなかった。もちろん、制作年代に違いがありすぎるが、仮にいま、『黒部の太陽』を作ったとしても、その視点はさほど変わりないのではないだろうか。なにより、こちらの方は、プロジェクトに関わった人間が、全員男性である。女性はひとりもいない。いまの視点で撮り直したとしても、『ドリーム』のような描き方はできないであろう。
そういえば、『海峡』(1982年公開)という映画も録画していた。これもいずれ観ようと思うが、それにしてもこの国は、国家事業を描く映画となるとなぜ、トンネルを作る映画になるのだろう。あ、『はやぶさ』があったか。
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