続・ブルシット・ジョブ
4月30日(土)
大型連休は、山籠もりである。
仕事のことは忘れて、好きな本でも読みながら体調を整えようと思っていたのだが、韓国から仕事の依頼が来た。
ここから先は愚痴になりますけど、この仕事が、あまり筋のよくない仕事なのだ。
日本語の専門用語に対して韓国語で語義説明をする辞典を作りたいので、その監修・校閲をお願いしたい、という依頼である。
そう聞くと、なんとなくよさげな仕事に見えるでしょ?
「どのくらいの項目数ですか?」
「3400項目です」
「さ、3400項目!?」
つまり、3400項目の専門用語について、韓国語の解説文の原案を読み、その解説文が適切であるかどうかをチェックし、必要に応じて修正しなければならないのだ。
「期限はいつまでです?」
「5月1日から2カ月間です。契約書を取り交わしますから、きっちり2か月以内に納品してください」
「はぁ」
「断るなら今のうちです。その場合は、他の人を推薦してください」
「他の人って…」
誤解のないように言うと、依頼主も、この仕事の筋がよくないことを自覚しているのだが、上司から命令されて仕方なく僕に依頼してきたのである。僕に依頼してきた、ということは、ほかにあてがない、ということを意味する。仮に他の人を推薦したとすると、僕はそうとう非道な人間ということになってしまう。
僕は依頼主にも恩があり、その上司にも恩があるので、断るという選択肢は、たぶんあり得ない。
それに、これは自慢でも何でもなく率直に言うと、その筋の専門用語がわかり、かつ韓国語がわかる人間は、この国のどこをさがしても、僕くらいしかいないのである。
結局、引き受けることにして、3400項目の韓国語解説文をデータで送ってもらったのだが、プリントアウトすると、A4版で200枚くらいになった。
この校閲を、通常の仕事の合間をみて行うというのは、はっきり言って不可能である。可能にするとしたら、この大型連休中に作業を進めてしまうほかない。
ということで、大型連休中は、この作業に没頭しなければならなくなってしまった。
しかし、この仕事、まったくモチベーションが上がらないのである。
率直に言って、こんな辞典、誰が読むんだ?需要がまったく感じられない辞典なのである。しかし需要がなくても、「大人の事情」で作らなければならないのだろう。これもいわゆる「ブルシット・ジョブ」である。
むかしからよくあるたとえで、囚人が重い石を右から左に運ぶという、徒労感だけの仕事をさせられることがある、という都市伝説が語られることがあるが、この仕事も、それに近い感じの徒労感を抱かせる。
いちおうギャラは出るそうなのだが、それも微々たるものである。
なんでいつもこんな目に遭わなければならないのか。だが愚痴を言っても仕方ない。久しぶりにハングルにどっぷり浸ることができる機会だと割り切って前向きにとらえるしかない。
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