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あるある映画

5月18日(水)

どうしても見なければならない映画があった。

それは、いま話題になっている、あるドキュメンタリー映画である。観るとしたら今日しかない、と思い、近所の映画館に赴く。地味な映画ながら、サービスデーだったこともあって、ほぼ満席だった。

もともと2017年にテレビ局のドキュメンタリー番組として放送されたものを、その後の経過を追加撮影、再編集して劇場用映画にしたものである。

テレビ放送された2017年当時よりも、この国の状況はさらに悪化していることがうかがえた。

なぜ、この映画をどうしても見なければならないと思ったかというと、僕自身が、このテーマに関わる、当事者の1人であったからである。

ここ数年、とくに昨年、僕が実際に体験し、目の当たりにしたことが、映画の中で手に取るよう立ち現れてくる。僕にとっては、あるあるネタ満載の映画だったのである。

こんな損な仕事は、今後、誰も引き受けなくなるのではないだろうか、とさえ思われたが、だからといって、こっちが身を引いてしまうと、やりたがる人間の天下になってしまう。それだけは、阻止しなければならない。結果的に、引き受けてよかった。

この映画の監督は、ここ最近、ラジオ番組や動画配信サイト番組での対談に引っ張りだこである。終始、明るい声で、なにより、めげない性格がすばらしい。本人はそうとうたいへんだったと思うが、それでも心が折れなかったのは、精神的にタフであるとしかいいようがない。

映画の登場人物の中で、この人を俳優の柄本明に演じさせたら最高だろう、と思いたくなる人が出ていた。僕とまったく縁のない人というわけではないのだが、その人の発言が、滑稽で、悲しく、そして恐ろしく、僕は複雑な気持ちになった。以前に見た映画『主戦場』でも同じことを感じたが、ああいうことをカメラの前で無邪気に語ることができる心理構造というのは、どうなっているのだろうと不思議でならない。想田和弘監督の映画『選挙』しかり、「あの種の人たち」は、なぜか無邪気に語りたがる。

こんなことが書けるのも、僕が数年かけて体験したことどもが、万事解決して、情報解禁されたからである。でもその仕事の代表者は、「無事に、というよりも、満身創痍で解決した」と言っていた。僕は末席に連なっただけだが、前線に立った人たちには計り知れない苦労があったのだろう。映画を観ながら、前線に立った人たちの苦労を重ね合わせた。

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