病歴話芸
7月30日(土)
午後から2本のオンライン会合がある。そのため、午前中のうちに近所のかかりつけのクリニックに行って、常用する薬を処方してもらわなければいけない。
それにもうひとつ、「ひとり合宿」中に、ある懸念が生じて、その懸念を払拭するために別の新しい薬を服用したほうがいいのではないか、と指摘されたこともあり、できるだけ早くクリニックに行きたいと思ったのである。
それは、僕も以前から薄々感じていたことで、ここ最近の体調不良は、それが原因なのではないかと思っていたところだった。
しかし、不安なのは、かかりつけのクリニックの医者の先生が、どうも「アレ医者」な感じの人なので、相談して大丈夫なのか、自信がなかった。
しかし背に腹は代えられない。とにかくかかりつけのクリニックに行くことにした。
まだ朝9時半過ぎだというのに、日差しがものすごく強くて、歩いていると溶けてしまいそうな暑さである。
そうしたらあーた、クリニックが臨時休診日ではないか!えええぇぇぇっ!!
本来は、先週に診察に行く予定だったのだが、忙しくて行けなかったので、1週間後の土曜日でいいや、と高をくくっていたところ、まさかの休診日だったのである。
どうしよう。薬を切らしてしまうと、この暑さである、尿酸値が上がって痛風の発作が起きてしまう恐れがある。
家族に聞いたところ、近くにあるもうひとつの診療所がいいのではないかと紹介された。う~む。近いとは行っても、この暑さで、別のクリニックまで歩くのはめんどうくさい。しかし、来週も忙しいので、かかりつけのクリニックに次に行く機会は、来週の土曜日になってしまう。とてもそこまでは待てない。考えたあげく、別の診療所まで歩くことにした。
しかし、その診療所の場所が、よくわからない。Googleマップで見ても、それほど距離は遠くないのだが、わかりにくい場所にあるのである。汗だくになりながら歩きまわり、道をたずねながら探したところ、ようやく見つかった。ふつうの住宅街の中にあり、ふつうの家を改装したようなこぢんまりした診療所である。
(大丈夫かなあ)ますます不安になった。
ドアを開けると、ふつうの家の玄関みたいなスペースのところに受付と待合室があり、数人の患者が所狭しと丸椅子に座って診察を待っている。
「予約してないんですけどいいですか?発熱はしておりません」吹き出した汗を拭いながら僕は言った。
「どうぞ。どうしましたか?」受付の女性がたずねた。
僕は、かかりつけのクリニックが休診日なので、代わりに薬を処方してほしい、それと、もうひとつ新たに懸念される病気の可能性があるので、それについても診てほしい、と伝えた。
「常用のお薬を代わりに処方することはできますが、新しく別の薬を処方できるかは、(かかりつけのクリニックが判断するのがスジなので)ちょっとどうなるか…」
「ああ、そうですか…」
僕は、常用の薬よりも、もうひとつの薬のほうの処方を期待していただけに、ちょっと落胆した。
しばらく待ったあと、診察室に呼ばれた。若い先生である。
「どうしましたか?」
僕は、これまでの僕の、複雑な病歴を、順を追って簡潔に伝えた。考えてみれば、僕は自分の複雑な病歴を伝えるのが、我ながら実に的確である。複雑な病歴を語るのに澱みがない。「病歴話芸」というべきか。ダース・レイダーさん流にいえば「Ill Communication(イル コミュニケーション)」である。「病歴漫談」で全国を回れるかもしれない。
僕の複雑な病歴を聞いた先生は、瞬時に理解したようだった。
「ちょっと心音を聴きます」
と、僕の胸に聴診器をあてた。これもまた新鮮である。かかりつけのクリニックの「アレ医者」は、いまだかつて僕の胸に聴診器をあてたことがない。これ一つとってみても、目の前にいる先生のほうが信頼できる。
「心臓の音は異常がないですね」
「そうですか」ひとまず安心した。
「わかりました。薬は2週間分出します。もうひとつの新しい薬のほうも、とりあえず最少の量で2週間分出して様子を見ましょう。その間に、かかりつけのクリニックの先生のところに行ってご相談ください」
「わかりました」
じつに適切な対応だった。おかげで懸案だった新しい薬も処方してくれることになった。
これで2週間服用して、あるていどの効果が出れば、その結果をもってかかりつけのクリニックの「アレ医者」に提示でき、同じ薬を引き続き処方してくれることになるだろう。そこまで見越した、先生の対応だった。
というか、かかりつけのクリニックを変更したい。
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