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ミュージアムコンサート

10月23日(日)

自分が住んでいる市の市報に、市内の博物館でミュージアムコンサートがあるという記事が載っていた。人数制限があるので抽選制だったが、家族が応募したところ、見事に当選して、家族で行くことになった。

同じ市内といっても、自宅からはバスを乗り継いだりして、交通の便が必ずしもいいわけではなかったが、それでも僕がそのコンサートに惹かれたのは、サックスとピアノのデュオだったからである。若い頃、アルトサックスを吹いた経験のある僕は、久しぶりにサックスの生の音色が聴けることに、胸が躍った。

ただ僕は、そのコンサートに関してはサックスとピアノのデュオによる演奏であるという情報しかわからない。だれが演奏するのか、といったこともわからないまま、会場に着いたのである。

会場の一番前の席を陣取った。見ると、グランドピアノの横に、すでにソプラノサックスとテナーサックスの2台が並んで立てかけられている。

しばらくして、開演時間になった。主催者の簡単な挨拶が終わると、いよいよ演奏者の登場である。

あらわれたのは、おじさんふたりだった。まさに「おじさん」と呼ぶにふさわしい男性である。僕はてっきり、というか、何の根拠もなく、サックスとピアノのデュオは、女性の方なのではないか、と想像していた。なぜなのかはわからない。博物館の小さな講堂の中で行われる、ユルいコンサートを想像していたからだろうか。だとしたら、僕の中でジェンダーバイアスがかかっていたといわざるを得ない。

もうひとつ驚いたのは、ピアノ奏者の方が、サックス奏者の方の手を引きながら、会場にあらわれたことである。サックス奏者の方は、目の見えない方だったのである。

僕は、ありとあらゆる狭小な思考や偏見が自分自身の中にあることを恥じた。

さて、演奏が始まった。忘れないうちに、演奏された曲を覚えている限りで書きとどめておく。

1.ヘンリー・マンシーニ「酒とバラの日々」

2.ルイ・アームストロング「On The Sunny Side Of The Street」

3.映画『カサブランカ』より「As Time Goes By」

4.「リカード・ボサノバ」(ギフト)

5.スタン・ゲッツ「ティズオータム」

6.ソニー・ロリンズ「マック・ザ・ナイフ(モリタート)」

7.「枯葉」

8.「Autumn In New York」

9.「Fly Me To The Moon」

サックス奏者の方によると、とくにこの曲をやると決めてきたわけではなく、成り行きでこういう曲順になったという。それにしても、ピアノ奏者の方との相性は抜群だった。

何より凄かったのは、ピアノ奏者の方が、楽譜も鍵盤も一切見ずに、サックス奏者の演奏に寄り添って演奏していたということである。ここでアドリブを終えて主旋律に戻る、というタイミングは、演奏者同士でアイコンタクトをしながら決める、なんてこともあるらしいが、サックス奏者の方は目が不自由なのでそれができない。ピアノ奏者の方は、ひたすらサックス奏者の演奏を見つめながら、タイミングを見計らって、アドリブを繰り広げ、さらにそれをサックスの主旋律に返していく。その呼吸が、ピッタリなのである。その一点だけで、このふたりの揺るぎない信頼関係というものが感じられた。

1時間程度の予定だったが、1時間半近くコンサートは続き、最後は30人ほどの会場が大きな拍手で包まれた。

いささか大げさだが、僕は音楽とは何だろうということについて、考えずにはいられなかった。そしてまたいつか自分もアルトサックスの練習をして人前に立ちたい、という希望がわいてきたのであった。

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