間に合えばお願いします
11月9日(水)
以前、「しつこくてすいませんが…」というメールが来て、絶対に出さなければならない職業的文章をやっとの思いで提出したら、実は僕の後ろには原稿を書いていない人がけっこういた、という話を書いた。
10月の末にその初校があがってきて、今回は校正を早めにして返しちゃおう、と、ほぼ校正をすませたところで、編集者から、
「間に合えばお願いします」
という件名のメールが来た。
こんどは何なに~!もうこの件名を見ればイヤな予感しかしない。
「まだ間に合えばですが、ご検討いただきたい点があります」
と、以下、3点について、大幅な修正点があげられていた。
そのうちの2点は、他の執筆者が書いた文章を、僕の書いた文章の冒頭にリライトして差し込んでほしい、その方が流れとして適切なので、という依頼だった。そして、その執筆者の文章のPDFファイルで送られてきた。他の執筆者のPDFファイルには、けっこうな分量の文章がマーカーで囲まれている。その文章を、僕の執筆したページに移して、自然な流れになるようにリライトしてもらいたい、というのである。
ちょっと待ってよ、そんな無茶な!言ってみれば、臓器移植手術ってこと?
すでに僕は、見開き2ページにピッタリおさまるように文章を書いている。サントリーウィスキー「山崎」の、「何も足さない、何も引かない」状態である。それでうまくいったと思っているのに、いまになって、他人の文章をこの中に入れろだと??
早く言ってよ!という心境である。最近、早く言ってよ!と言いたくなる事案が増えていて、それでなくともムシャクシャしていたのだ。
ふつうだったら、「そんなことできるか!」と突っぱねるところなのだが、それはそれ、僕もプロのライターだから、「わかりました」とやってみることにした。
まず、僕の文章の中に挿入すべき、他の執筆者の文章。これが、僕の文体とはまったく異なる。はっきり言って難解なのである。しかも長い!これを、書いてある内容をかみ砕いて説明したうえに、適切な長さにまとめる必要がある。
修正して確定した文章、つまりは1段落分を、僕の原稿におさめるのだが、そうするとこんどは、僕の文章が、その段落の分だけはみ出してしまうことになる。そこで、こんどは僕の文章を削る。
不思議なもので、自分の文章を読み直すと、ここはなくてもよい説明だな、というところに気づく。それらをバッサリと切って、なんとか見開き2ページにおさめた。するとあら不思議、修正した全体の原稿は、以前の原稿よりも読みやすくなった。
「何も足さない、何も引かない」なんて言ってる場合ではないな。こと文章に関しては、足したり引いたりすることでもっと味わい深くなることもあるのだ。
そんな作業を昨晩の夜遅くまで行い、深夜に先方に送信した。久しぶりにかなりの寝不足となった。翌朝、「お忙しいなか、また急なお願いにもかかわらず、ありがとうございました」と、短い返信が来た。
何が言いたいかというと、先方の無茶で急な依頼に対応して、先方の希望に沿った文章を納品する俺ってスゲえ、ということなのである。要はいつもの自慢ですよ。
たぶん、その文章が日の目を見ることはないのだが。
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