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言葉にする勇気

11月7日(月)

通勤に往復5時間、職場の滞在時間が2時間というのは、ひたすら徒労感が増すばかりである。しかも夕方の都内は退勤の車で大渋滞であった。

何も書くことがないので、一昨日のトークイベントのことをもう少し書く。

トークイベントに出た、僕の「うっすい知り合い」について、この人はすごいなあ、と思う場面があった。

対談が始まる直前のことである。その「うっすい知り合い」は、司会進行役の店主に、何やら耳打ちをしていた。僕は一番前の席だったので、なんとなくその声が聞こえたのだが、

「換気のために、書店の入口の扉、ほんの少しでいいので、開けていただけませんか?」

とおそらく言っていたのだと思う。トークイベントということで、ほかのお客さんが入ってこないように、とか、音が漏れないように、ということで、書店の入口は閉められていたのだろう。でも、狭い店内だし、そのなかにお客さんを含めて15人くらいはいたので、その「うっすい知り合い」は、感染のことを心配したのである。僕は鈍感だったが、お客さんの中にも、そういうことを気にする人がいたに違いないし、その人のことに対する想像力もはたらかせたのだろう。

物腰の柔らかい店主は、「そうですね。そうしましょう」と、その方の意図をくんで、書店の入口の扉を換気のために開けてくれた。そのことにホッとした「うっすい知り合い」は、心おきなくトークに集中できたようであった。

なにより、こういうことを、ちゃんと言葉にして相手に伝える、というのは、本当にすばらしいと思う。別のたとえでいえば、人前でたばこを吸うのがあたりまえだったような時代に、「たばこをやめてもらってもいいですか?」と伝えるくらい、勇気のいることである。ほんのちょっとした言葉を口に出すことで、世の中が少しずつ変わるような気がする。

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