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「ラーハ」な時間

11月11日(金)

今週も、よくぞ、よくぞ「アシタノカレッジ金曜日」のアフタートークまでたどり着きました!

少し前に、文筆活動や地方局のラジオパーソナリティーなどをしている「うっすい知り合い」のトークイベントに来店参加した、ということを書いたが、一昨日の水曜日、その友人の方から、メッセージが届いた。というか、その「友人の方」、というのが、僕がかつて仕事をしたことがある人で、その人を介して、そのラジオパーソナリティーの方と1,2度面識を持った、という経緯がある。

そのメッセージによると、その前日、久しぶりにふたりで仕事をして、その仕事が比較的早く終わったので、夕方に代々木公園を通ったら、大勢の人が空を見上げている、何かと思ったら、皆既月食を見ているのだとわかり、じゃあせっかくだからと、皆既月食を眺めながら代々木公園でしばらく時間を過ごすことにした、と。

で、その代々木公園で、急遽、ラジオ番組を収録すること思い立った。ふたりが大変お世話になった編集者の方が、いま重い病で闘病中である。その編集者のためだけに、架空の、というべきか、非公開の、というべきか、とにかく私家版のラジオ番組を作って、その闘病中の編集者の人に贈り、元気になってもらおう、と計画したそうなのである。

で、その完全非公開のラジオ番組の音声ファイルが、僕のところにも送られてきた。いわゆる「完パケ」というヤツである。

なぜ、その音声ファイルが僕のところにも送られてきたかというと、その闘病中の編集者は、僕もよく知っている人で、僕も大病を患ったことがあったものだから、たまにメールを送って、その編集者を励ます、と言ってしまっては上から目線な感じだけれど、なんとか元気になってもらいたいと思っていたので、そのことを知っていたその二人が、僕にもその完パケのラジオ番組の音声ファイルを送ってくれたのだろう。もちろん、僕よりもその編集者と親しい人は何人もいるから、他の人にも送ったものと思われる。ただ、間違いないのは、そのラジオ番組は闘病中の編集者のためだけに作られたものである、ということである。

送られてきた音声ファイルには、「鬼瓦先生からのおたよりをお待ちしております」と、メッセージが添えられていた。おたより?おたよりって何だろう?

さっそくその音声ファイルを聴いてみると、これがちゃんとしたラジオ番組になっていた。オープニングのフリートークがあり、2つくらいのメール紹介コーナーがある。メール紹介のコーナー、といっても、非公開のラジオ番組なので、実際にはメールが来るはずもなく、二人でそのテーマに関する即興のトークをする。さらに、曲も3曲ほどかかった。ふつうのポッドキャストだったら権利関係で音楽は流せないのだが、私家版で非公開のラジオ番組なので曲は堂々と流すことができる。

つまり最初から最後まで、ちゃんとしたラジオ番組の体裁をとり、しかもきっちりと30分に時間をおさめていた。おそらく、皆既月食の夜に代々木公園でトークを収録し、その後1日かけて、そのラジオパーソナリティーが音楽を入れたりして30分の番組に編集したのだろう。

たったひとりに向けてのラジオ番組のために、これだけの手間をかけるって、すごくない?その番組の中で、とくにその人に向けてのメッセージはなかったが、それとわかるキーワードがふんだんにちりばめられており、闘病中の編集者は、おそらくこれを聴いて泣いたと思う。

さて、「鬼瓦先生からのおたよりをお待ちしております」というメッセージの謎が解けた。そのラジオ番組のコーナーに、メールという体裁で何かを書いてくれ、ということなのだという意味なのだ。もちろん冗談で書いたのだろうけれど、この冗談を受け流してよいものだろうか。冗談には洒落で返すべきなのではないか。

2つほどコーナーがあったうちの1つが、「あなたにとってのラーハな時間」というテーマだった。「ラーハ」というのは、アラビア語で「くつろぎ」とか「安息」という意味で、仕事でも遊びでもない時間のことを言う。もう一つのテーマでは書きにくかったので、こちらのテーマを選んで、ひとつ洒落で書いてみることにした。番組内ではメールの宛先についての告知がなく(あたりまえだ)、「何らかの方法で送って下さい」と言っていたので、このラジオ番組を送ってくれた人に、ラジオ番組にメールを出す体裁でメッセージを書いた

「初めてメールします。ラジオネーム『○○○○○○』と申します。私のラーハな時間は、小さくて個性的な本屋さんに行って、店内に並んでいる本を眺めることです。はじめて知った本があったり、店主や店員さんの選書のセンスが光っていたりすると、それだけでも幸せな気分になります。最近は店内にカフェが併設されている書店も増えましたが、古い人間のせいか、カフェを利用する勇気がまだなく、書店のカフェを利用しながら日がな一日好きな本を読むことが、よりラーハな時間を過ごすための次なる課題です」

我ながら、なんとなくラジオ番組へのメールっぽくなったではないか。

このラジオ番組に2回目があるのか、わからないし、そもそも非公開で私家版のラジオ番組なので、結局このメールが日の目を見ないで終わるのは間違いない。そんなことはどうでもいいのだ。僕がいま思うのは、病気と闘っている、ひとりの人のために、皆既月食が見える夜の代々木公園で二人でおしゃべりをした会話を収録して、仕事でもないのに30分のガチのラジオ番組に仕上げて、その人に贈る、という行動、それこそが、いちばんの「ラーハ」な時間なのではないか、ということである。

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