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いまになってわかること

12月31日(土)

朝、ボンヤリとNHKを観ていたら、「世界ふれあい街歩き ウクライナ キエフ 特別版」が再放送されていた。

観たいと思っていた番組だ。

今年の6月に、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」のオープニングトークで、大竹まことさんが訥々と、この番組について語っていた。

以下、そのときのトークの様子を、文化放送の公式HPから引用する。

「6月14日(火曜日)大竹まことゴールデンラジオ(文化放送)で、パーソナリティの大竹まことが2019年に撮影されたウクライナ・キーウの平和な街歩き映像をテレビで鑑賞し、現在のキーウの映像との違いに打ちのめされたことを語った。

大竹が観たのはNHKの「世界ふれあい街歩き」という番組で、3年前のキーウの静かで平和な映像が映され、その後、現在の同じ場所にあるロシア軍戦車の残骸が映されたそう。2019年の映像で子供たちと一緒にピザを作り、食べさせていた現地の帰還兵らが、今は戦場に赴き、一人は亡くなっていると明かされたり、また、2019年の映像でウクライナ伝統の楽器を演奏し歌っていた街の人も、現在は戦場に向かっていると説明されたりしたという。大竹は「ウクライナは過去に色んな戦いからやっと落ち着いて、平和に暮らせていた時に、今回のことが起きた。歌っていたあの人は楽器を捨てて銃を持っているのだよね」。と短い期間に起きたあまりの変化に信じられない様子。

フリーライターの武田砂鉄も「バンドのクイーンが以前ウクライナでライブを行った映像を無料公開したのを見たが、その会場で熱狂して音楽を楽しんでいた人々が、今は文化やエンターテイメントを奪われてしまっている。そういうところへの想像を常に持っておかないといけないと感じる」。と現地に人々の現状に思いを馳せた。大竹は「判断はともかく、こういうことになっているといいたかった」。とリスナーへ力を込めて語った。」

少し補足をしておくと、このときに大竹まことさんが観た「世界ふれあい街歩き ウクライナ キエフ」は、今日再放送された「特別版」と同内容で、2019年に放送されたバージョンに、戦争が始まったその後の状況について、ナレーターのイッセー尾形さんが補足している、というものである。ちなみに、大竹さんとイッセー尾形さんは、古くから親交のある芝居仲間である。

僕はこのときのオープニングトークがずっと印象に残っており、「世界ふれあい街歩き ウクライナ キエフ 特別版」をいつか観たいと思っていたのが、大晦日になって、やっと実現した。

2019年放送の時点では、キエフは実に穏やかな街であった。2014年のウクライナ危機から帰還した兵士が、社会復帰のために子どもたちとピザを作る、という、その帰還兵の顔は、穏やかで楽しそうな顔をしていた。しかしこの時点で、ふたたび戦地に赴くことになるとは知らない。

長崎に原爆が落とされる前日の、長崎の人々の日常を描いた、井上光晴の『明日』という小説を思い出した。黒木和雄監督によって『TOMORROW 明日』というタイトルで映画化されており、僕は映画を観たクチである。

翌日に原爆が落とされることがわかっている後世の人間にとっては、その前日は特別な日常に映るのだが、そのときに生きていた人々は、いつもと変わらない平凡な日常である。

2019年時点でのキエフは実に穏やかな日常にみえるが、いま、この時点で見ると、かけがえのない日常に見えてしまうのは、おそらくそういうことなのだろう。

その番組の中で、チェルノブイリ原発事故を伝える博物館の前を通りかかる場面がある。その博物館の前にいたふつうの若者が「歴史に学ばない者に未来はない」と何気なく語っていたのが印象的だった。

そしてこの日の夕方に、NHKのBSプレミアムで映画「ひまわり」が放送された。映画「ひまわり」については、すでに述べたことがあるので省略する。

あらためて映画「ひまわり」を見直してみると、細部についてはほとんど忘れていた。

ストーリーとは関係ないのだが、戦争で行方不明になった夫を妻がいまのウクライナで探す場面で、ほんの一瞬だが、鼓胴のような形をした巨大な建物がいくつか並んでいるのが映っている。どこか見覚えのある建物だと記憶をたどると、チェルノブイリ原発とよく似た建物である。チェルノブイリ原発そのものではないようだが、ウクライナに置かれた原発であることは間違いないようである。驚くことに、原発に隣接してふつうの人々が暮らしているのだ。映画を観ていたつもりであっても、見えていなかったことが多すぎる。いまになってわかることも多い。関心のないものは目に映らないということなのだろう。

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