« 責めを塞ぐ | トップページ | 縮図 »

ちょっとした人捜し

14年ほど前、1年間の韓国留学でお世話になったウさんは、私より少し年上だが、日本に留学した経験があったので、留学当初は韓国語がまったくわからなかった僕にとっては、恩人である。

コロナ禍で韓国に行けなくなったこともあり、ウさんとはもうずいぶん会っていない。いまはFacebook上でのつきあいである。

そのウさんが、公開設定で、次のような呼びかけをした。

「1991年留学生別科に入学し、1992年3月に修了した韓国人のウともうします。その当時にT大学教育学部に在学していたK(当時3年生)という卒業生を探していますが、情報はH県出身である事だけです。現在は、たぶんH県で小学校の先生になって弟子を育てると思います。何とか探すことができますでしょうか?私が1992年からR大学で留学中に大変お世話なっていることを一生わすれないからです。」

そのメッセージに、二人ならんで写っている写真が添えられていた。大学時代に撮った写真である。

コメントも見ると、

「下の名前はわからないんですか?」

「わからないんです」

というやりとりがある。つまり苗字しかわからないのだ。

しかし、その苗字というのが、ひどく変わっている。僕は少なくとも初めて見る苗字である。これならば、かなり探しやすいのではないだろうか。

じゃあ、その苗字で検索すればいいじゃないか、となるかもしれないが、その苗字は、一般名詞としても使われたりする熟語なので、検索したところでよくわからない。

「H県で小学校の教師をしているであろう」というウさんの推測、そして変わった苗字、この2つを手がかりに、人探しをはじめる。

仮に小学校の教師をしていたとしたら、人事異動が公表されているはずだ。まずはH県の県庁所在地の市の小学校の人事異動情報をインターネットから探す。

すると、あったあった。S小学校の教頭先生の名前がKさんである。

「S小学校の教頭先生の名前がKさんですよ」

とコメントに書く。

「ワオッ!ありがとうございます。連絡をとってみます」というウさんの返事。

「結果を教えてくださいよ」

「当然でしょう」

しかしそれからどうなったのか、しばらく音沙汰がなかった。

今日、ウさんからメッセージが来た。

「鬼瓦先生のおかげでKさんからメールが来ました。ほんとうにありがとうございます」

やはり、僕の調査は間違っていなかった。

そして、その下には、Kさんから来たメールの一部が転載されていた。

「ウさん。君が京都から連絡なしにいなくなって30年が過ぎました。突然職場にairmailが届き、驚きました。よく、俺の所在がわかったなあと感心しました。どうやって見つけたんだろうかと。」

俺が見つけたんだよ、と言いたかったが、言ったところでどうにもならない。

いずれにしても、30年ぶりに、二人は連絡を取り合うことができたのである。

ウさんは、日本での留学中にたいへんお世話になった人にちゃんとしたお別れを言えなかったことを、ずっと悔やんでいたのだろう。それで、公開で呼びかけたのである。で、ウさんにお世話になった僕が、ウさんの旧友を引き合わせた。

お世話になった人のために、その人がお世話になった人を捜し当てるって、なんか運命的でしょ?

|

« 責めを塞ぐ | トップページ | 縮図 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 責めを塞ぐ | トップページ | 縮図 »