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5歳の寅さん

6月6日(火)

夜、家に帰ると、5歳の娘が異常に機嫌がよい。

こんどの金曜日に、保育園で大の仲良しのHちゃんが家に泊まりに来るからである。娘はこれを「お泊まり会」と呼んでいる。

そもそも、なんで「お泊まり会」なんかやることになったのだろう?何日か前に娘に直接聞いてみると、自分で呼びかけたらしい。

仲のよい友だちひとりひとりに声をかけて、なんとか「お泊まり会」を実現させようとしたのだが、次々と断られ、最後にHちゃんだけが、「いいよ」と言ってくれたそうなのである。

娘の方からそういう提案を果敢にしていたことに驚いた。僕も妻も、お客さんを家に呼ぶのが大嫌いでおなじみだからである。それを、5歳の娘が自分の家にお友だちを呼んで「お泊まり会」までしようっていうんだから、いったいだれに似たのだろう?

とにかく、帰宅早々、娘のテンションが上がりまくっている。

「何してるの?」

「きんようびのれんしゅうをしているの」

聞くと、お風呂に入って、自分の頭を洗う練習や、Hちゃんの頭を洗ってあげる練習、それが終わったら歯磨きをして、Hちゃんに「仕上げ磨き」をしてあげる練習まで考えていた。

「仕上げ磨き」とは、自分で歯磨きをしたあと、最後にママやパパに歯を磨いてもらう行為をいう。それを、娘がお友だちにしてあげたいそうなのだ。

「『仕上げ磨き』はどうかなあ」

「どうして?だめなの?」

「さすがにキモチワルイと思うよ」

「そんなことないよ!」

とにかく徹頭徹尾、お客さんが快適に過ごしてもらうよう、自分はアテンドに徹したいらしい。

「えほんもよんであげるんだ~」

「絵本も読むの?」

「うん」

「でも、Hちゃんの方がおねえさんでしょ?Hちゃんの方が絵本読むのが上手なんじゃないの?」娘は3月の早生まれなので、Hちゃんは少し年上なのだ。

「ちがうよ。Hちゃんはえほんをよむのがおそいんだよ。ほんとうだよ」

「そんなこと、Hちゃんの前でいっちゃダメだよ」

「わかった」

「あと、部屋の中を裸で走り回っちゃダメだよ」

「わかった」

「おならもしたらダメだよ」

「わかった」

いろいろとNGがある。

とにかく今日は、本番さながらのイメージトレーニングに余念がない。

まるで、マドンナが柴又の家に来る前に、ぬかりないようにイメージトレーニングをしている寅さんを見ているようで、ひとつひとつの行動がたまらなく可笑しい。もうテンパってテンパって、当日までには息切れをしてしまうんではないかと心配になるほど興奮している。

はたして、本番はどうなるのか。

「本番の日はね、今日練習したとおりにやるんだよ」

「わかった」

とプレッシャーをかけておいた。

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