デジタル化社会(笑)
6月27日(火)
大変な事態が起きている。
打ち合わせにめずらしく職員さんが遅れてやってきた。この打ち合わせというのは、数日後に行われる会議の下準備のためにおこなわれるもので、会議当日に配布する資料を検討・修正して、本番までに正式な会議資料を作り、会議の段取り(DDR)を考える、といったことをする。僕が会議の議長なので、僕もその打ち合わせに出なければならないのだ。
遅れるだけでなく、その会議資料の草案というのも、いつもにくらべてかなり不十分な仕上がりである。いつも堅実な職員さんが、一体どうしたのだろう?
「すみません」
「何かあったのですか?」
「実は…」
と、その職員さんが話し始めた内容というのが、実に驚くべきものだった。
うちの職場に限らず、うちと同業種の会社では、全国的に、「紙の刊行物」を廃止して、デジタル化を進める方向にある。かくいううちの職場も、その流れに与している。
で、そのデジタル化のシステムというのは、ほぼ全国の同種の会社がこぞって、ある一つの機関から提供を受けている。いわば、全国の会社が、そのシステムに頼ってデジタル化を進めていると言ってよい。
で、そのデジタル化のシステムが、この6月にバージョンアップすることになり、バージョン2からバージョン3に移行するという通達が来た。
しかし、このバージョン3というのがくせ者で、バージョンアップした途端、とんでもない不具合を生じた、というのだ。
たとえば、ある言葉を検索にかけると、不正確な検索結果が出る、とか、日本語で検索しているのに、検索結果がなぜか英語で出てくる、とか、人の名前を漢字で検索すると、なぜかカタカナになって出てきたり、とか。
職員がその問題点をまくし立てるようにしゃべるので、聞いていて、どういう状況なのか今ひとつわからないところもあるのだが、とにかく、バージョン3というのが、正常に動作していない、ということだけはよくわかった。
うちの職場だけなのだろうか、と思って、システム提供元に問い合わせをしてみようと、問い合わせフォームみたいなところをのぞくと、すでに全国の同様の会社から、システム提供元に対して、「更新したシステムに不具合があるのでなんとかしてください」という問い合わせが、山のように来ていることがわかった。つまり、うちの職場だけの問題ではなく、明らかにシステムそれ自体に不具合があるのだ。
しかし、当のシステム提供元は、自分たちの責任ではない、といわんばかりに、「もし不具合がある場合は、このマニュアルに沿って修正してください」みたいな回答が来る。つまり、現場でなんとかしろ、というわけだ。
えええぇぇぇっ!!明らかにもとのシステムじたいに不具合があるのに、何で現場レベルで個別に修正しなければならないのか?システム提供元から提供されたそのマニュアルというのも、きわめてわかりにくいもので、およそ現場でスムーズに対応できるようなマニュアルではない。
しかし、放っておいたらおいたで、利用者が不便な思いをするし、混乱を招くことになる。仕方がないので、現場の職員が手作業で一つ一つのデータについて修正することになる。結果的に無駄な仕事が増え、肝心な仕事に取りかかれないという本末転倒な事態になる。
ここまで書いて、わかったかな?書いている僕自身はよくわかっていないのだが。
とにかく、現場があまりに理不尽な仕打ちを受けているので、システム提供元に「いったん白紙に戻して、システム自体を再構築してからバージョンアップしたらどうですか?」と進言する会社がいくつもあるそうなのだが、システム提供元は、聞く耳を持たないという。
こりゃあ、署名でも集めて直談判するしかないんじゃないか、という動きもあると聞いて、いよいよ事態の深刻さを実感した。
この事案は、あまりにわかりにくい話だし、多くの人々にとってはあまり関係のないことだから、ニュースで取り上げられることはないのだが、しかしながら重大な問題であることには違いない。
ここまで読んだ賢明な読者はおわかりだろうか。これは、今直面している、マイナンバーカードのシステムの不具合とそれに対する対応の仕方と、うり二つである。
これはいったい何を意味するのか。
この国のデジタル化事情が、マイナンバーカードに限らず、そもそもきわめてお粗末な状況である、ということ。
システムの不具合に対して「システムに問題はない」とかたくなに信じていることもまた、この国の「デジタル話法」である。その結果、しわ寄せが来るのはいつも現場の人間である。
つまり、マイナンバーカード問題は、この国のデジタル化のお粗末な事情に照らして、起こるべくして起こった騒動なのである。似たような騒動は、見えないだけで至るところで起こっているのだ。
菅原文太さんが生きていたらこう問いかけるだろう。
「デジタル化って、何かね?」
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