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ウラをとる

6月1日(木)

5月29日(月)放送分の文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」の「大竹メインディッシュ」のコーナーは、佐藤B作さん。

大竹さんと同世代の芝居仲間がゲストに来るときは、ほんとうに面白い。

口の悪いB作さんは、同世代の役者仲間への嫉妬やら、同世代の役者の若い頃の恥ずかしい話やらを、おもしろおかしく毒づきながら喋る。

その中で、こんなやりとりがあった。

大竹「噂では、坂本龍一さんと女性を取り合ったという…」

B作「あいつ(坂本龍一)ねえ、学生の頃『自由劇場』に来てねえ、もう『坂本』『B作』の仲だから」

大竹「『あいつ』なんて言っちゃっていいの?世界のサカモトですよ」

B作「知らないよそんなこと、俺が出会った頃はただの学生だったから。モテたねえ」

大竹「取り合ったら負けるでしょう」

B作「そりゃあ負けるよ。中央線の、何て駅だったかなぁ、(女性のアパートに行ったら)すでに坂本龍一が中にいました。で、泣きながら帰ってきましたよ」

大竹「ホントの話?それ」

B作「本当の話ですよ。嘘なんか言ったことないですよ、一度も」

大竹「ホントにいたの?、そこに」

B作「いたよ、『B作さん、ダメ、今日は帰ってください』今日は、っていうか、一度も入ったことないんだけどね、そのアパートには」

大竹「取り合ってないじゃない!」

B作「そうだね。一方的に負けてるんだ…坂本、あいつメチャクチャなんだよ」

大竹「なんで呼び捨てなんだよ!」

B作「うちによく泊めてあげたんだ。カネなくなって」

大竹「ホントに?」

B作「ホントだよ。芸大の学生の頃。そうしたら次の日、必ずお母さんが『佐藤さん、うちの龍一を泊めてくださってありがとう』って来てね」

大竹「ホントかなあ、その話」

B作「ホントだってば。すげえマザコンだったんだ」」

大竹「『マザコン』とか言うな!YMOだよ!」

B作「有名になってからはつきあいないんだよ」

大竹「ずっとシカトされてた…」

B作「病院で会っても『よぉぅ、B作』って言うくらい…」

大竹さんは、「その話、ほんとうなのか?」と驚くばかりである。たしかに嘘のような話で、佐藤B作さんと坂本龍一さん、まるで接点がない感じがするが、坂本龍一さんの『音楽は自由にする』(新潮文庫)には、学生時代にアングラ演劇に関わっていた思い出が語られており、その中にこんな記述がある。

「友だちを介して自由劇場での公演にも関わりました。参加している人たちがみんな面白い人ばかりで、そういう人たちと一緒にものがつくれるのはとても楽しかった。ステージに立ったこともあります。作・演出は、まだ一般的に有名になる前の串田和美さん。吉田日出子さんとか柄本明さんとか佐藤B作さんとか、みんな友だちでした。一度公演があれば、2週間や3週間はずっとそれにかかりきりですから、大学に行ってる暇なんてまったくありませんでした。

当時のアングラ演劇では、役者をやりながらミュージシャンもやっているというような人も珍しくなかった。演劇の中でも音楽がふんだんに使われていたし、演劇と音楽は、かなりシンクロしていました」(128~129頁)

坂本龍一さんと佐藤B作さんが自由劇場時代に友だちだったことは紛れもない事実である。坂本さんは、それを行儀よく語っているが、B作さんの語りは、その当時の様子をさらに活写している。

たしかに話を盛っている可能性はあるが、こういう語りは、決して活字にはあらわれない、消えてなくなってしまうような思い出である。お金がない坂本龍一さんを泊めてやったというB作さんの話じたいは他愛もない話だが、坂本さん本人も語りえなかった、ほかでは知り得ない証言として貴重であると思い、ここに記録を留める。

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