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大興奮のお泊まり会

6月9日(金)

いよいよ、うちの娘と保育園で同じクラスのHちゃんが、わが家に泊まりに来る日である。

この日は、Hちゃんのママが、Hちゃんとうちの娘のふたりのお迎えに行き、まずはHちゃんの家で夕飯をごちそうになる。夕飯の後、ふたりはわが家に来て泊まる、という段取りである。

Hちゃんの家とわが家は、バス通りを隔てたマンションという至近距離で、何かあったらすぐに行き来ができるので安心ではある。

ただ、うちのマンションは狭いし、早くから僕が帰ったらふたりはのびのびと遊べないだろうと思い、ふたりが寝てから帰宅することにした。

途中、妻からは「大興奮でアテンド中」というLINEが入っていて、うちの娘がテンションが上がりまくってHちゃんをアテンドしている姿が目に浮かんだ。

帰宅したのは10時過ぎ。9時にはふたりとも寝ているだろうと思ってドアを開けたら、さにあらず、ドアを開けると、ふたりは大興奮で、おもちゃ遊びに興じていた。それはもう、取り憑かれたように遊んでいるといった感じである。

まあ冷静に考えたらそうだろう。お友だちが泊まりに来て、お行儀よく9時に寝るなどということはありえない。

僕はすぐにお風呂に入ることにし、用心のため中から鍵をかけたのだが、なんとうちの娘は、その鍵をいともたやすく外から開けてしまった!

うちの部屋の鍵は、万が一中から出られなくなったときのために、ドアの外側のところに小さい溝が空いていて、それを10円玉か何かでスライドさせれば、外から鍵を開けることができるしくみになっている。5歳の娘は、だれに教えてもらうことなく、いつの間にかその裏技をマスターしていたのだ。恐るべしである。こうなったら、内側から鍵をかけても無意味だということになる。

幸い、「安心してください。はいてますよ」というタイミングで開けられたので事なきを得た。

お風呂場に漏れ聞こえてくる音に耳をすますと、何やらふたりはマイクのおもちゃを使って歌を歌っているらしい。よくよく聞くと、「おしっこ」とか「おなら」とか「おしり」とか、そんな下品な言葉をちりばめながら、ゲラゲラと歌っている。

おいおい、Hちゃんはおとなしい子かと思っていたら、まったくそうではなく、下品な歌を歌ってゲラゲラ笑うような子だったのか!

その後もずっと、遊びをやめない。

「もう寝ますよ」

と電気を消すのだが、ふたりはそーっと起き上がっては、眠ろうとする大人にさまざまなちょっかいを出している。

眠っているいかりや長介に何かといたずらをする加藤茶と志村けん、といったようなドリフのコントを彷彿とさせて、可笑しくて仕方がなかった。

そのうち、さすがに疲れたのか、11時半にようやくふたりとも眠った。

翌朝、娘は早くに目が覚めてしまい、6時にはひとりで起きていた。あまりに興奮して、あまり眠れなかったのだろう。

朝ご飯を食べてから、公園に行く。その公園で、HちゃんのママがHちゃんを引き取りに来ることになっているのだという。

僕が家で待っていると、しばらくして娘が泣きながら帰ってきた。

「どうしたの?Hちゃんとけんかでもしたの?」

と聞いてみたのだが、実はその正反対で、Hちゃんと別れて寂しくなっちゃったらしい。大人の理屈からいえば、また月曜日に保育園で会うので、何も泣くこたあない、と思うのだが、5歳の娘には「今生の別れ」に映ったのだろう。

「たくさん遊んだねえ。なんの遊びが一番楽しかった?」

と聞いたら、

「うた」

と答えた。

「歌?どんな歌?」

「トイレでおしっこ~♪、トイレでおしっこ~♪」

昨晩に聞いた下品な歌である。

あれだけいろいろな遊びをして、いちばんに面白かった遊びがそれかよ!

昨晩からのアテンドに疲れた娘は、お昼ご飯を食べた後、泥のように眠り続けた。

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