7月18日(火)
韓国から帰国した翌日の朝7時。
あまりに体調がおかしいので体温を測ってみると、37.7度だった。喉も少し痛い。
恐れていたことだが、夏風邪をひいたらしい。その前の週に娘が夏風邪をひいていて、それがうつったのだろう。
韓国滞在中は、多少喉に違和感があったものの、体調はふつうであった。
気になったのは、帰りの飛行機である。気圧の関係で耳がおかしくなることはよくあることだが、たいていは耳抜きをすれば解決する。ところがこのときばかりは、帰宅してしばらくしても、いくら耳抜きをしても鼓膜がなかなか戻らない。以前も一度、そのような体験があり、そのときもやはり体調が悪くなったので、今回も、ことによると体調が悪くなる前兆かなと感じたのである。そうしたら案の定、熱が出たのである。
これはまずい。今日は職場で午前に1つの作業、午後に1つの会議と1つの打ち合わせがある。とくに午後の会議では、僕が報告しなければならい事案がいくつかあったし、打ち合わせというのは、僕が司会進行の会議を円滑に進めるために事前に事務方とするもので、当然、僕がいないと始まらない。
僕はすぐに、今日の職場での仕事について、3件の担当者にそれぞれメールで連絡して、休むことを伝えた。
しかしさらに心配なのは、その翌日である。
僕は水曜から1泊2日の「ひとり合宿」が決まっていたのだが、熱があるとなると、「ひとり合宿」は当然中止しなければならない。しかし、このたびの日程も、僕が前後の仕事を整理して、ようやく開けた2日間である。もしここで中止になれば、日程を再調整しなければならない。いわゆる「リスケ」である。
リスケ、で思い出したが、職場外のなんとか委員会の会議の日程について、さんざん日程調整したあげく、結局僕がほかの会議のある日の同じ時間でしか調整がとれず、「鬼瓦先生には大変申し訳ありませんが、この日のこの時間に会議をいたします」と言われた会議が2件ほどあった。僕は思ったね。「どの会議でも、僕の日程の都合は一番優先されないのだ」と。ま、自覚しているからいいのだけれど。
それはともかく。
とにかく1日様子を見ることにして、朝からひたすら安静に励んだ。
が、翌朝(水曜日の朝)に熱をはかってみたら、39.3度。ひえ~。悪化しとるやんけ!
これはさすがにやばいととりあえず近所の診療所でコロナの検査をしてもらおうと予約したところ、お昼頃に診てもらえることになった。
「熱は?」
「朝はかったら39.3度でした」
「喉の痛みとか咳とは?」
「喉は少し痛いですが、咳はあまりありません」
抗原検査をしたら陰性で、ひとまず安堵した。
「しかし鬼瓦さんの場合、いろいろなご病気を抱えていますからねえ。夏風邪の原因はともかく、どのように治療すればよいかは難しいです」
「そうですか」
「最悪のケースも考えられますから、何かあったらすぐにご連絡ください」
「わかりました」
翌日の木曜日、相変わらず高熱だが、僕が司会することになっている金曜日の会議について、職場の担当者とメールで打ち合わせをし、最終的にはメール審議で問題ないということで決着した。
さすがに金曜日あたりは熱が下がるだろうと思ったが、朝熱をはかると、39.7度とまだ高い。メール審議に変更しておいてよかった。
さらに気になったのは、今まで咳がほとんどなかったのに、咳が止まらなくなってきたことである。
水曜日に診療所に行ったときに、嘘でも「咳が出て仕方ありません」といえばよかったなあ、そうしたら咳止めの薬をもらえたのに、と後悔した。
そして土曜日。朝熱をはかると、38.8度だった。咳はいっこうに止まる気配がない。
これはもう、僕が使っている別の薬の副作用が今回の夏風邪と融合して大変なことになっているとしか思えない。
しかし山場はここからである。明日の日曜日は午後に都内で会合があり、僕が1時間ほど喋らなければならないのだ。
当然、現地参加することはムリでなので、オンライン参加に変えてもらうことにした。
一応、発表時の配付資料は先方に送ってあるので、発表の準備がまったくできていない、というわけではないのだが、それでも、落語でいうところの「ネタをさらう」ことがまったくできていない。
日曜日、朝熱をはかると37.0度だったが、頭は朦朧としているし、咳は止まらない。
午後1時に会合が始まるのだが、Zoomの設定にとまどり、入室したのが12時57分。1時と同時に会合が始まり、主催者の挨拶が5分くらいあるだろうからその間に画面共有のためのファイルの段取りを済ませておこうと思っていたら、主催者の挨拶は1~2分で終わり、早速僕が喋らないといけなくなった。
僕は何事もなかったかのようにファイルを画面共有し、話を始めた。
しかし、ほどなくして異変が起きた。喋ろうとすると、咳が出て止まらなくなるのである。
「えー、まずはじめに、ゲホッゲホッ、」
「すみません。ゲホッゲホッ」
最初はマイクがオンのまま咳をしていたが、さすがにこれはマズいと思い、咳が出るかな、と思ったらすぐにマイクをミュートにして思いっきり咳をして、大丈夫そうかなと思ったらマイクをオンに戻して話を続けることにした。
しかしひどいときになると、マイクをオンに戻して話そうとしたらまた咳が出そうな予感がしてすぐにまたミュートにして咳をする、ということの繰り返しになった。まったく、話を聞いている方にしてみたら、何を喋っているのか、まったくわからなかっただろう。おまけに、長期間の高熱が続いているおかげで、思考能力が低下し意識が朦朧としているのである。
しかし後半の30分になると、なんとか咳が落ち着いた。咳を出さないような声の出し方のコツをつかんできたからだろうか。コツ、といっても、ひたすら小声で喋るようにしただけなのだが。
なんとか1時間の持ち時間が終わり、聴衆からの質問の時間となる。質問されても、こちらは頭がボーッとしているから、訳のわからない返答しかできない。
というわけで、「無事ではなく終わりました」が、聴いていた人たちは、みんな「あいつは一体、何を話していたのか?」と最後までわからなかったに違いない。
夏風邪は、まだまだ続く。
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