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2週間の挑戦

9月23日(土)

昨年だったか、おカタい出版社が発行している、雑誌のようで雑誌ではない、定期刊行物というのか、不定期刊行物というのか、とにかくハードカバーの専門的なシリーズ本の編集部から、原稿依頼があった。その本に400字の原稿用紙で40枚程度の職業的文章を書いてくれ、という依頼である。

その専門的なシリーズ本というのは、僕の専門とは違う分野なので、困ってしまった。以前も依頼されて書いたことがあるが、畑違いの分野なのでかなり苦労して、なんとか自分の専門に引きつけて職業的文章を仕上げた記憶がある。

そのときにネタを出し切ってしまったので、もう絞っても出て来うへんよ、と思いつつ、締切はずいぶん先か、だったらネタは後でゆっくり考えればいいや、と思い、「書きます」と意思表示をして、そのままにしておいた。

そのことを忘れていたのだが、9月に入ってその編集部から「もう締切すぎてます。原稿のタイトルと進捗状況を教えてください」とメールが来て、あわてて以前にもらった依頼状を確認すると、締切が7月末とあるではないか!さらに出版予定は今年中と書かれているので、これは遅れてはいけないヤツだ!とそのとき初めて気づいて顔が青くなった。

しかし困った。何も手をつけていないし、何度も言うが畑違いの分野なので、書くネタがひとっつも思い浮かばない。

(万事休すか…)

ひとまず、これまで書いてきたことで、畑違いの分野にも関係がありそうなものをかき集めて焼き直しの職業的文章を提出しようかと考え、それらしい仮タイトルをつけて先方に提出したが、どうも自分自身も納得がいかないし、焼き直しなので書いていてつまらないだろう。なにより、焼き直しなんてよくない。

困ったなあと思っていたら、9月10日(日)の講演会終了後、教え子のMさんの車で「新幹線の停まる駅」に向かう途中、Mさんが寄り道をしてくれた場所でMさんの説明を聞いているうちに、

(これじゃね?)

と神が降りてきた。

僕がよくやる「方向転換」である。

しかしこのネタで、いまからゼロベースでいろいろと調べて400字40枚の職業的文章が書けるのか?…全然自信がない。

さんざん悩んだあげく、帰宅後にMさんにメールをすると、忙しいにもかかわらず、職業的文章のネタになりそうな資料を次々と送ってくれた。

よし、これでなんとか書けそうだ、と確信に変わり、先方の編集部にタイトルの変更を告げたところ、了承された。

そこからは、仕事の合間を見て書いていくわけだが、新しいネタだし、畑違いの分野なので、書いていて楽しい。できあがったものを読む方にしてみたら、それほどたいしたものではないと感ずるだろうけれど、なにより自分が書いていて楽しいと思えるだけで十分である。

ほかにも書かなければいけない原稿が渋滞しているので、この原稿に費やせる時間は2週間だな、2週間経って満足できない仕上がりになっても、それをそのまま提出しよう、と決めた。

結果、400字の原稿用紙で30枚弱、と予定した分量には及ばなかったが、もうこれで十分と判断し、9月23日(土)の夜、完成原稿を出版社にメールで送った。ちょうど、9月10日(日)から2週間経った日である。内容はともかく、畑違いの分野に関する職業的文章を2週間で書き上げたという事実だけでもう十分だ。Mさんがいなければ書けなかっただろう。

やれやれである。

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