12月17日(日)
娘の通っている保育園の同じクラスのM子ちゃんが引っ越しをするというので、送別会をすることになった。
といっても、まわりのママ友たちが企画したのではなく、引っ越しをするM子ちゃん一家自身が企画したのである。
「14時~16時半まで○○団地の会議室でお別れ会をします。手作りのお菓子を差し上げますので、お時間のある方はどうぞお立ち寄りください」
というチラシまでLINEで送られてきた。
自分たちのお別れ会を自分たちで企画して人を呼ぶなんて、まるで「泣いた赤鬼」ではないかと、少々切ない気持ちがしたが、それが聞いてみるとそういうことではなかった。
M子ちゃん一家は、北海道に引っ越して、そこでカフェを始めるという。つまりこれまでの仕事を辞めてまったくの新天地で新しい人生を始めるというのだ。なるほど、だからホスピタリティに関するポテンシャルが高いのだな、あるいはこれは、北海道でカフェを新しく始める前の予行演習なのかもしれない、などと妙に納得した。
14時キッカリにたずねるのもアレなので、15時頃に娘を連れてその団地の会議室に行くと、すでにほとんどのお友だちがいて、収拾がつかないくらい大騒ぎしていた。
今日はさすがにアルコールはないだろうと思ったが、あいかわらずママ友やパパ友たちは勝手にお酒を持ち込んで呑んでいる。僕はいつまで経ってもその光景に慣れない。
あいかわらずだれとも話すことなく、しばらくは呆然としていたが、やがてM子ちゃんのパパが話しかけてくれた。
僕はM子ちゃんのパパと話をするのは初めてだったが、実に人当たりのいい好青年だ、という印象を受けた。ま、そういう人でないとお店をやろうとは思わないだろうけれど。
僕は、
「よく決断しましたね。どうして北海道でお店をやろうと思ったんです?」
と聞いてみた。見たところ30代で、人生これからといった感じである。
「前から、いつかお店をやりたいと思っていました。たまたま北海道を旅行した時に、その町に惹かれ、ここでお店を開こうと決めたのです」
「北海道出身じゃないんですか?」
「いいえ違います。北海道に住むのはこれが初めてです」
僕はますます驚いた。なんとい無鉄砲な生き方だ。しかし、お話ししていると穏やかな人だし、野心まる出しの人というわけではない。
聞くと、その町というのは、ほかからの移住者が多く、しかもそこで観光客を相手に飲食店を始める人が多いということだった。地図で場所を確認すると、道央のあまり聞いたことのない町なのだが、ある有名な女性の俳優が移住してからたいへん話題になった町であるという。
「最近、アド街ック天国でも紹介された町なんですよ」
「しかしそんな小さな町では、ベスト20を探すことじたいが大変でしょう」
「ええ。かなりむりやりな感じでベスト20をひねり出してました」
「来年からM子ちゃんは小学生でしょう?小学校とかはどうなんです?」
「来春の1年生は7人だそうです」
「それだと、サッカーとか野球とか、チームが組めませんね」
「かろうじてドッジボールくらいですかね。内野に1人、外野に2人とか」
「内野が圧倒的に不利ですね」
「あとはバドミントンとか卓球とかテニスとか」
「ほとんど個人競技ですね」
今後のM子ちゃん一家の人生、なかなか面白い人生になりそうだ。
「お店ではコーヒーも出すのですか?」
「ええ。妻の弟も移住するので、コーヒーは弟に任せるつもりです」
なんと、一族総出で移住するのか?ますます面白い。
こういった話を聞けただけで今日は来た甲斐があった。しかし「今度遊びに行きますよ」とは軽々しくは言えなかった。なにしろ遠すぎる。
会の最後で集合写真を撮った時、M子ちゃんのママは感激のあまり涙を流していた。全体としては、いい会だったのだろう。
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